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05_Coming in nicely 「いい感じに育ってる」
「あらいいわ」とフランクが言った。「すごく、すごくいい形になってきてるわよ。あたしのと同じくらい大きくなるのももうすぐね」
「ありがとう、フランク」とクレイグが答えた。「ホルモンを始めてまだ半年だって、信じられる?」
「ほんと? あたしなんか半年してもAカップだったのよ! あなたって、運がいいわよ。ヤバすぎ!」
「ええ、分かってる。それにジャネットがあたしの胸が大好きで、ずっとサポートしてくれてるの。分かる? つまり……」
「ええ、分かるわよ。テストの結果をもらった時、彼女がいなかったのを喜んでるところもあるのよ、あたし」
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犯罪は減った。学力は向上している。落第率は過去最低。端的に言って、アメリカ合衆国はかつてのような最強国に戻りつつある。
どのようにしてか? 実際、簡単なことだ。すべての人に、その人のあるがままの人以外になるよう強制することをやめただけである。何年もの間、何千もの若者たちが、男らしさがないことを過剰な行動によって補ってきた。その結果、ある者は犯罪をして生きる者になり、またある者は無知で醜い性差別主義者になった。だが、そんな中でも、ごくごく少数であるが、生産的な社会の構成員になった者もいた。
そんな時、革命が起きたのだった。当初、その考え方は嘲りの対象となった。すべての男性が男性にならなくてもよいのだという考え方(そして、すべての女性が女性にならなくてもよいという考え方)は、それほど新しい考え方だった。だが、時を経るにつれ、私たちのテスト方法も改善し、「ベータ・ボーイ」と「アルファ・ウーマン」という言葉が日常的な語彙に加わるまでになった。
今は18歳の誕生日を迎えると、合衆国(および、多くの先進国)に住むすべての人間はテストを受け、ベータとアルファのふたつのカテゴリーに分類されることになった。生物的な性別はほぼ関係ない。精神的な性別こそが重要な点となった。
その後はすべての人が選択肢を与えられるようになった。生物的に自分の肉体を精神に合わせるよう変えるか、そのまま偽りの人生を続けるかの選択肢。言うまでもなく、大多数が、自分が本来あるべき人間として生きる方を選んだのである。