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08 A new track 「新しいトラック」
最近、学校で変な目で見られるようになった。イジワルな目で見られるというわけではない。何と言うか、みんながボクのことを気にしているような目でボクを見ているのに気づいたということ。言ってる意味が分かってくれるといいけど。……特に男子の目つきが変。
多分、2ヶ月くらい前にボクが本気でトラックを走り始めた時からだと思う。高校では陸上部に所属していたけど、大学では陸上競技で他の学生たちと張り合えるとは思っていなかった。そんな時、ボクはキャロルと出会った。今のボクの彼女。キャロルはボクに本気になって全力を尽くしてやってみなさいよって、熱心に勧めてくれた。そしてボクはその勧めに従った。キャロルは、有利と思えるところがあったら全部利用するつもりにならなければ、やる意味はないとも言っていた。
彼女が体毛を剃るべきと言った時、理屈があってると思った。体毛が空気抵抗を作ることはみんな知っている。そこでボクは体毛を全部剃った。最初は変な感じだったけれど、2週間もするうちに気にならなくなった。その後、キャロルはボクに新しいシューズを買ってくれた。それまでのシューズより軽くて、走りやすいものだった。唯一の問題はそのシューズがピンク色だったこと。でも、どうでもいいやとボクは思った。そして次に彼女はボクに新しいウェアを買ってくれた。肌にぴっちりしたウェアで、それを着るときは特別の下着を履かなくてはいけなかった。でも、しばらくすると、新しい下着にも慣れてきて、ボクはいつもそれを履くようになった。
最後にキャロルはボクに新しいビタミン剤を買ってくれた(毎日3回飲んでいる)。でも、2週間前、ボクは陸上部から追い出されてしまった。コーチは、ボクの記録がどんどん落ちてるからだと言った。でも、キャロルは、ボクが陸上部の他のメンバーより輝いて見えてるので、ヤッカミからだと思っている。
キャロルは本当にボクのことを応援してくれてる。