僕が玄関のドアノブを回そうとした、ちょうどその時、父が僕に声をかけた。
「いくら払ってくれるんだ?」
僕は振り向いた。
「まあ、どのくらいの時間かとか、どんなことをしてくれるのかとか、1人なのか2人なのかとか、それにもよるけど?」
父は、母とシンディの2人に顔を向けた。
「私がこんなことを訊かなくてはならなかったのも、お前たちのせいなんだ。もう、私は、お前たちに侮辱されることはやめる。限界に達したよ。もし、また私を侮辱するようなことがあったら、私もテッドと同じく、姿を消すことにする。分かったか!」
父が、このような声の調子でものを言うのを僕は初めて聞いた。母が、驚いたように顔を上げたが、その反応を見ると、母も初めてだったのだろう。母は、そんな父に言い返すほど愚かではなかったようだ。
母はシンディの顔を見た。シンディはただ頷くだけだった。母が僕に言った。
「私たち2人ともで。今から、明日の朝9時まで。私たちがテッドにしてあげたことと同じことをしてあげるわ」
「もっと具体的に言ってくれないと分からないなあ。僕は、テッドがどんなことをしてもらっていたのか、知らないし、もちろん、してもらったことなんかないわけだから」
母は僕を見つめながら言った。
「私たちを殺したり、手足を奪ったりすること以外なら、どんなことでも」
「そう・・・でも、僕は、その気になれば、今から2丁目に行って、一晩50ドルで売春婦を2人買ってもいいんだけど。いや、もうちょっと金を払ってもいいかも知れない気分になってるんだが」
「もし、街に行く替わりに私たちを連れて行ってくれたら、朝になるまでに、ありとあらゆるセックスの夢を叶えてあげるわ。ちゃんと保障します」
僕は、50ドルで手を打つことにした。実際、2人はもっとお金が必要なのだろうと思ったが。僕は振り向き、玄関を開けた。母は、体を洗い、子供たちを寝かしつけるので、少し待っていてと言った。