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67 A changed man 「変えられた男」
ボクはため息をついた。「カレン、そんな目でボクを見るのやめてくれない?」
「どうしても見てしまうのよ」と彼女は目に涙を浮かべた。「あたしは、ただ……あたしはどうしたらいいの?」
「別に何も。ボクは依然として君の夫だよ。分かってるだろ?」
「あたしの夫? こんな夫? 本気で言ってるの? ドニ―、自分の体を見てみなさいよ! 信じられない」 と彼女は頭を左右に振った。「これがあなたが悪いわけじゃないのは分かってるけど、だからと言って、あたしがこれでOKだなんて思ってほしくないわ。あなたがこんな姿になっているのに、あたしたちが以前の状態に戻れるなんて思えるわけがないでしょ」
「それは分かってるけど、でも、ボクたちは依然として……」
「何よ? あたしとあなたは何だっていうの? 夫と妻? あんた、どう見たって女じゃないの、ドニー! 女よ! さらに悪いのは、今のあなたがあたしよりもずっと綺麗になってること。あなた、まるでモデルのように綺麗じゃないの!」
「それは分かってる。でも……」
「でも、何よ! あなた、そのカラダでスーツを着て、前のような男に戻るつもりなの?」 カレンは両手で顔を覆い、さめざめと泣き始めた。ようやく顔を上げたら、マスカラは乱れ、両目が赤く縁どられていた。「あの時、あなたは行くべきじゃなかったのよ。あたし、何か悪いことが起きると思っていたのに」
「実験室で爆発があったのは知ってるよね? ボクのDNAも突然変異を起こしたのを知ってるよね? それでボクはこうなってしまった。お願いだよ、カレン。こんなことになるなんて、誰も予測できていなかったんだよ」
「ええ、あなたがこういう姿になってしまうのは誰も分からなかったわ。でも、あたしは、あなたが行くべきではないと分かっていたの。……行かないでって言ったのに。なのに、あなたは行ってしまった。どうしても行かなくちゃって」
「ボクには選択肢はなかったんだ」とボクはつぶやいた。
「いいえ、もちろん別の選択はあったわ。それに、正確にどんなことが起きるかは予測できなかったかもしれないけれど、それでも、ひどく悪いことになる可能性があることは分かっていたはず。危険があるのを知っていた。なのにあなたは実験室に行ったのよ。そして、1年近くもあたしを置き去りにして。連絡も一切なし。あたしは、ずっと、ただここに座ってあなたが帰ってくるのを待っていた。期待しながら。悪いことが起きませんようにと祈りながら。そして、結果はと言うと、その悪いことが起きてしまって、あたしの夫はいなくなってしまったと知らされたのよ」
「ボクはまだ君の……」
「違うわよ! 違う! あたしの夫は男なの! ドニ―、今のあなたが何者か、あたしには分からないけど、あたしの愛する夫じゃないのは確かだわ。あなたは、あたしが一緒になった男性じゃないわ!」
「な、何を言ってるのか……」 ボクは声がかすれていた。
「出て行ってって言ってるの。何か服を着て、出て行って。こんなこと、あたし、耐えられない!」