
67 A secret 「秘密」
「まあ、これってちょっと恥ずかしいわ」とライリーが言った。
この言葉、今の状況を表す言葉では全然ない。カイルの言葉に詰まった反応を見ても、それは明らかだった。「で、でも……えーっと、君は……」
ライリーはにやりと笑い、下を向いて自分の体を見た。「ちょっとショックだったかも。隣に住む女の子にはおちんちんがついていたなんて、思ってもいなかったものね?」
「ぼ、ボクは……」
「ちょっといい?」 と彼女は体を屈め、つるつるの脚に沿ってパンティを引き上げた。「この土地が先進的な地域じゃないのは知っているの。それに、あなたがすごくビックリしてるのははっきり分かる。でも、このこと、他の人に言わないでもらえると、すごくありがたいんだけど。新しく引っ越してきた女の子ってだけでも、いろいろ嫌なことがあるの。それが、ましてや新しく引っ越してきた男の子だったと分かったら、もっと嫌なことがあるのよ。言ってる意味が分かると思うけど」
彼女は、タンクトップを着て、裸体を隠しながら、この男の子、いつになったら開いた口を塞ぐのかしらと思った。この男の子はあたしと同じ年だ。自分と同じ高校3年生。それに、この男子はちょっとぎこちない感じはあるけど、そこがまたキュートだと思った。ブロンドの髪、青い瞳、そして、自分はうまく慣れられない中西部の人間らしい無邪気そうな性格。彼女はそう思った。
「君は男なんだよ」とカイルが言った。
「目はいいのね」とライリーは答えた。「でも、違うわ。正確には違う」
「でも、君には……あの……」
「ちんぽがついている。そうよ、その点は1分前にも話したと思うけど。いい、聞いて、カイル……カイルって名前でいいのよね? いい? だからこそ、取引なの。誰にもこのことを言わない。いい? 体を変えるとき、そのせいで、もう3回も転校しなきゃいけなかったんだから。もう転校はこりごりなのよ」
話す様子は平然としているけれども、この何年かはライリーにとって信じられないほど辛い日々だった。女性化には結果として様々な恥ずかしい状況に対処する必要がある。ライリーは、そういった女性化の現実に対処しなければならなかったのに加えて、彼女が男子ではないという理由で彼女を嫌い、イジメをする数多くの群れをなす者たちと対決する必要もあった。もちろん、彼らはライリーが女性的な男の子であった時も彼女をイジメたが、彼女が女性化を始めると、そのイジメはいっそう激しくなった。それは身体的な暴力を受けるという形で頂点を迎え、彼女は3日間、入院することになった。その事件の後、彼女の両親は転居することが最善と考えたのだった。
でも、今、ライリーは、それを過去のこととして前に進んでいる。いや、前に進もうとしていると言った方が正確だろう。
「だから、お願い。あなたはこういう状況に巻き込まれる筋合いじゃないのは分かってるわ。そもそも、あたしのこと、まだ知らないわけだし。でも、あたしを信じて。この秘密は絶対に守ってほしいって本気で言ってるの」
カイルはしばらく沈黙していたが、ようやく口を開いた。「分かった。誰にも言わない。君が言ってほしいと言うまでは、決して」