67 Initiation 「イニシエーション」
グラントは、男子学生クラブに加入を希望していた。彼は振り向いて、そのクラブ員たちを見た。顔には居心地が悪そうな表情を浮かべていた。「本当にこれをしなくちゃいけないんですか?」 懇願するような声になっていた。
学生クラブの団長のポールは頷いた。何かを期待してるのか、ニヤニヤしていた。「クラブに入りたかったら、やらなきゃダメだよ。簡単なことだろ?」
グラントは溜息をついた。周りの人に気づかれないように、駐車場に背を向けた。彼はガールフレンドから借りた無地の白いドレスを着ていた。頭にはウィッグを被り、サングラスと花をアクセサリーにしている。
男子学生クラブに加入するための儀式。グラントが他の男子学生と同じような容姿だったら、これもそんなにひどいことではなかっただろう。他の学生はみんな肩幅は広く、脚は毛むくじゃらで、顎も突き出て割れていたから、女装したらバカ笑いの種になるが、グラントは違った。自分の姿を鏡で見て知っていた。彼は、自分が少なくとも大半の女子と同じくらいは女性的に見えることを知っていた。
脚にはほとんど毛がなかったが、それも剃りきった。残ったのは、恥丘とおちんちんの上に茂みがちょっとだけ。その結果、元々、女性的だった脚がますます女性的で、柔らかそうで、つるつる滑らかに見えるようになった。彼の全体的な容姿からすれば、その脚の姿はふさわしい。けれど、そのおかげで彼は何度も「可愛い男子」のあだ名で呼ばれることになった。こういった容姿と、普通よりは小柄な体格のせいで、彼は際立って女の子っぽく見えるようになっていた。
彼はドレスの裾をいじりながら機会を待った。学生クラブ入会のためのイニシエーションが始まってから初めて、彼は断念することを考えた。その考えに膝まで嵌った時、一台の車が近づいてきた。車の窓が降り、中から年配の男性が顔を出した時、グラントは心臓が喉から飛び出てくる気がした。
「お嬢さん、何か困ったことでも?」 とその男性が訊いた。
「あ、いえ……あたしは、ただ……」 これから学生クラブの仲間になるはずの学生たちが期待していたように、グラントは甲高い女性的な声を使って答えた。そして一度、深呼吸をし、緊張を鎮め、おもむろにドレスの裾をめくりあげ、スカートの中、何も着ていないことを露わにしたのだった。「あたしは、ただ、あたしが可愛いシシーだというのを皆さんに知ってほしいだけなんです」
「ああ、なんてこった!……お前、変態だな!」 男性はそう叫び、アクセルを踏み急発進で走り去った。タイヤの軋み音に続いて、グラントの学生クラブの仲間たちの笑い声が聞こえた。彼らは駐車場の車の影に隠れて、グラントとあの男性とのやり取りを見ていたのである。
グラントはドレスの裾を降ろし、彼らの方を向いた。「ほらね、やったよ。だから、頼むよ。もう、この服を脱いでもいいよね?」
会長のポールはグラントを頭からつま先までまじまじと見て、「まあ、その件についてはなんとかできるんじゃないかな」とイヤラしそうな笑みを浮かべた。「寮に戻ってからだな。それを脱いだ後は、お前のような可愛い入会希望者には、もう2つ、3つタスクをしてもらうことになってるから」