67 Law of the land 「この国の法律」
「ジェリー、来てくれてありがとう。すごく嬉しいわ」
「ええ? キース? キースなのか? いつ連れてこられたんだ? それに、なぜ?」
「何も悪いことはしなかったんだけど。本当よ、誓ってもいいわ。ただ、女の子をデートに誘っただけ。別にハラスメントなんかするつもりはなかったの。ましてや、暴力なんて使わなかったのに」
「ああ、分かるよ。あの法律はどんどんエスカレートしてきてる。俺がどう思ってるか分かるよね?」
「ええ、分かるわ。あなた、あたしに警告しようとしてくれてた。近いうちに、この種のことが起こり始めるだろうって言ってたわよね。でも、あたしは耳を貸さなかった。だって、自分に起こるなんて思ってもなかったもの……」
「今さら関係ないよ。もう君は完了したんだよね? 2ヶ月くらい前に、俺たちの会社のCEOが女体化の判決を受けたのを見たよ。彼が犯した犯罪はと言うと、秘書に可愛い女の子を雇ったってことだけなんだ。彼女が雇われてから、たった1週間で、彼女は彼をセクハラで訴えて、今、あのCEOは会社の慰み者になって遊ばれてるよ。どんどん手に負えなくなってる」
「ええ」
「それで? キースの場合は、どんな判決だったの?」
「1年間。でも、それは関係ないわ。1年たって市民権を取り戻しても、男に戻れるわけじゃないから」
「でも、少なくとも、綺麗な女になれて良かったじゃないか。ラッセルことを覚えているか? 大学時代の彼だ」
「ええ」
「あいつは、あの法律が施行されて1週間足らずで女体化の判決を受けたんだ。だけど、女体化されてもひどく醜くてな。カラダはそこそこ良いんだが。だが、あいつのあの鼻じゃ……」
「ジェリー? あたし、これからどうしたらいいのかしら? 一生このままでいるのはイヤなんだけど」
「悪いが、どうすることもできないんじゃないかな。少なくとも、北部では生きていけないだろう。あっちに行ったシシーたちは大変な目に会ってるよ。でも、この土地なら、常時、裸でいても問題ないんじゃないかな。まあ、少なくとも、ここは暖かいから」
「ええ……まあ、確かに……」
「それはそれとして、これ、ヤッテもいいんじゃないか? どうだ?」
「ヤルって、何を? ちょ、ちょっと。あなた、なんで……どうしてボタンを外してるの?……ちょっと、いやよ、ジェリー! あなたとは……」
「今のうち、慣れておいた方がいいぜ。これから1年、死ぬほどすることになることだからな」
「でも、あたしたち友達だったでしょ! あなただって、この新しい法律に文句を言っていたじゃ……」
「法律は法律だよ。いいから、つべこべ言わず、そこにひざまずけよ」