67 Part of me 「心の一部」
「ええ、その通り」とエリンは言った。「あるわよ。あたしにはおちんちんがある。で、あえて言うけど、あなたは、それを予想していなかったということよね。でしょ?」
「ぼ、僕は……」
「それって、予想してなかったって返事よね」 エリンはそう言って、体の重心を移動した。「でも、ボブ。ひとつ質問させてくれる? それって、重要なコト?」
「もちろんだよ、重要なことじゃないか!」 ボブはようやくまともに声が出せた。濃い色の髪を掻きむしり、エリンに背を向けた。「ちくしょう、もちろんじゃないか。重要だよ、エリン」
エリンは溜まっていたものを吐き出すようにトゲのある笑いをした。「どうしてよ? ソレがあるかないかで何か変わる? 知った後も、まだ、あなたがあたしに気を寄せているのは知ってるわ。これは消えてなくなることはないの。それに、誓ってもいいけど、あなたも気に入るはずよ。で、何が問題なのよ?」
「き、キミには……キミは男だったんだよ!」 とボブは叫び、再び裸のエリンの方を向いた。
「お願い」とエリンは両脚を閉じ、体を起こした。「あたし、男に見える? 真面目に訊いてるの、ボブ。あたしに男性的なところと言える点なんて、まったくないわ。あなたより、あたし自身がずっとそういう点について厳しい目で見てるから、自信をもってそう言える。何年も、男っぽいところの残りカスを最後の最後まで消し去ろうとしてきたのよ。何年もなの、ボブ。あたしは、少なくとも他の女と同じくらいは女となってるわ」
「でもキミには……」
「ちんぽがある」 エリンは手を振り、ボブをさえぎって続けた。「そのことはもう話しあったでしょ。こういえば安心するなら言うけど、コレはもう機能しないの。でも、あなたが、その方がいいなら、その手の薬もあるし、あたしも飲んでもいいわよ」
「何だって? いや、ダメだよ。僕はそんなことを望んでない……違う……僕はもう帰る」 ボブはそうは言ったが、出て行こうとはしなかった。
「だったら、帰れば? あたしにはあなたを止められそうもないから。でも、あなたは帰らないと思う。まだ、あたしのことを求めていると思ってる。そして、あたしのこの小さなモノを無視するための言い訳を探しているだけだと思う。でもね、あたしは、あなたにコレを無視させることはしないわ。コレはなくならないもの。もし、あたしと、たった一晩でも一緒になりたいと思っているなら、あたしのコレをちゃんと可愛がらなくちゃいけないでしょうね」
「でも……そんなこと言っても……僕にはできない……」
「できるんじゃない? むしろ、あなたには、そうしたいと思ってる部分があるんじゃないかと思ってるけど? 観念したら? 心が命ずるままに、すればいいんじゃない?」
「ぼ、僕は……それが、キミが僕にしてほしいこと?」
エリンは微笑んだ。「こっちに来て、コレにキスして。その後どうなるか見て、あたしたちの今後が分かるんじゃないかしら?」