67 Persuasion 「説得」
「ぼ、ボクは気が変わったよ。行きたくないよ」
「行きたくないですって? 気でも狂ったの? こんなに可愛い娘、そうはいないのに」
「ボクを娘って呼ばないで!」
「ごめんなさい、サム。ただの言い回しよ。あなた、すごく緊張してるわ」
「うん。ただ、何と言うか、みんながボクを笑い者にするんじゃないかって…」
「バカなこと言わないで。あなたの可愛いお友だちもみんな、同じような格好をしてくるわ」
「ボクの可愛いお友だちって、そんな言い方は当てはまらないよ。男子学生社交クラブの学友って呼んでよ。それにボクはみんなの服装のことを言ってるんじゃないんだよ。例えば、君ならカイルにドレスを着せられるかもしれないけど、そんな格好をしても、カイルは、やっぱり男だって言えるでしょう?」
「というと、あなたに、その服装が似合いすぎてることが気になってるの?」
「分からない。ちょっと、そうかもと思ってるよ。ていうか、ボクを見てみてよ。ボクもメクラじゃないんだ」
「キュートだと思うわ。それにセクシーでもあるわ」
「ほ、本当? この格好のボクを見ても、ボクのことシシーだとは思わない?」
「あなたは、あるがままのあなたにしか見えないわよ。そして、あたしはそんなあなたが好きになった。だから、他の人もそんなあなたがを気に入ると思うわ」
「ほんとに?」
「あなた自身も、気に入ってるんじゃない?」
「まだよく分からないんだ」
「じゃあ、こうしたらどう? 気持ちを決めて一緒にパーティに行く。そして、パーティに出ても、まだ、居心地が悪いんだったら、すぐにお暇して、ふたりで戻ってくる、というのは? 最後までいなくちゃいけないわけじゃないもの。あなたとふたりでここにいても楽しいけど、一緒にパーティに行っても同じくらい楽しめると思うけどなあ」
「わ、わかったよ。でも、ボクが帰ろうと言ったら……」
「一緒に帰る。問い返しはナシ。それで決まり?」
「決まり!」
「今夜はすごく楽しい夜になりそう!」