「ええ、多分、観ててもいいかも」とあたしはつぶやいた。「多分、どんなふうに進むのか確かめておかなくちゃいけないって気持ちがしてるからの」。
あたしの返事を聞いて、クリスティは急に目を輝かせ、あたしに抱き着いてきた。
「ありがとう、ママ。ママのこと本当に大好き」
階段の方から足音が聞こえてきて、あたしたちは体を離した。クリスティは溜息をつきながら、キッチン・テーブルに座り、あたしは向きを変えて、料理の支度に戻った。
息子がキッチンに入ってきた。「ママ? 今夜、ジーナの家に泊まるって言ったら怒るかなあ?」
息子は普段着のズボンとTシャツ姿で、たった今、シャワーを浴びたばかりの様子だった。
「もちろん、怒らないわよ。あなたはそうしても構わない大人になったと思うから。ただ、いつまでもママの一番の男の子だってことを忘れないなら、だけど?」 返事しながら、クリスティがトミーの股間をじっと見つめているのに気づいた。
息子は意味ありげな笑みを浮かべた。
「もちろん僕はママの一番の男の子だし、これからもずっとそうだよ」 と息子はクリスティには見えないようにして、あたしにウインクした。「ただ、パパが返ってくるわけだから、いろいろあるかと思って……」
「あら、それは心配ないわ。あなたのパパは今夜は忙しくなると思うもの」 あたしは、この言葉がどういう意味にとられるか、何も考えずに返事した。
トミーとクリスティはふたり同時に笑い出し、あたしは自分が言ったことの意味を知って、顔を赤らめた。
「わーお、ママったら、今夜、パパを大忙しにするつもりなのね?」 とクリスティがはやし立てた。
「だとしたら、僕は絶対、家にいてはいけないね」と息子がふざけ混じりに言った。
息子が、このことを気にしてなくて、あたしが彼の父親をまだ愛していて、今夜、セックスするつもりでいることを理解してるのを知って、あたしは嬉しかった。
「さあ、ふたりとも。もうママに恥ずかしい思いをさせるのは充分でしょ? もう、ママの邪魔をしないで、よそに行ってちょうだい」 と笑いながら言った。そして、ふたりともすぐにキッチンから出て行った。
ふたりが出て行くとき、息子がクリスティをじっと見つめていたのに気づいた。クリスティは妙に誘惑的な雰囲気を出していて、トミーは間違いなく彼女のことを妹じゃなく女性として見ていたと思った。あたしは思わずため息。うちの家族、どんどんとてもややこしくなっていくかもしれない……本当に、すごくややこしい関係になっていくみたい。
夫が帰宅した時はカオス状態だった。みんなで代わるがわる彼に旅行やビジネスのことについて質問しまくりっぱなし。最後にはジョンも疲れ切ってリビングのソファにぐったりとなっていた。
クリスティはジョンを挟んで、あたしの反対側に座っていた。ジョンは時々クリスティの方にも目を向けていた。それと言うのも、クリスティは露出した服装でとても誘惑的な感じに振る舞っていたから。何となく、娘は父親のためにそういう服装をしてるんじゃないかと思い始めていた。でも、どうして? まさか……まさか、ジョンをその気にさせるため? まさか、ダメよ、クリスティ! 娘でしょ? その考え、多分、あたしが息子と関係してることで燃え上がった、単なる、あたしの妄想にすぎないんだろうけど。