68_Awakening 「目覚め」
「その調子よ」 とヘザーは近くの床にひざまずきながら興奮して目を輝かせた。「その調子でやってもらうの。脚を広げて、その大きくて力強い男に、最高のことをやってもらうのよ」
あたしは彼女の言う通りのことをしつつも、彼女と視線を合わせることができなかった。ジャックが太いおちんちんを押し込んでくるのに合わせて、あたしの唇から震える喘ぎ声が漏れた。恥ずかしさが波となって全身に押し寄せ、あたしの体をわななかせる。
「感じてるんでしょ?」とヘザーが甘い声で言う。「私には分かるわ。あなたって、とんでもない淫乱ですもの」
あたしが悪いんじゃないとヘザーに言いたかった。あたしは彼女があんなに強く言い張るから、こんなことをしてるだけなのと言いたかった。でも、本当のことは知っている。これを止めさせようと思ったら、いつでもできるということ。でも、あたしはこれを求めているということ。少なくとも、ヘザーと同じくらいに、コレを求めている。興奮するし、エロティックだし。あたしはこれに囚われ、夢中になっている。
ジャックがぐいっと入ってきた。あたしは小さく、甲高い悲鳴を上げた。彼がまさに突いてほしいところを突いてきたから。「そ、そこ……」息が絶え絶えになってる。「そこ、突いて!」
ジャックは、最低な男だけど、まさにやるべきことを知っていて、あたしの求めに応じて、やってほしいことをしてくれていた。一方、ヘザーの精選した男があたしを巧みに燃え上がらせている傍らで、ヘザー自身は絶えずあたしに猫なで声で恥ずかしい言葉を言い続けていた。あたしを辱める言葉。自分のカラダに素直に反応するよう励ます言葉。その言葉、すべて以前に聞いた言葉ばかりだけど、実際に男に犯されている時に言われると、心の奥に鋭く突き刺さってくる。あたしの中に入ってるのが彼女のストラップオンじゃなくて本物のペニスだと思うと、いっそう、最大の効果を持って突き刺さってくる。
オーガズムに近づいてる時、一瞬、すべてが明瞭に理解できる瞬間があった。これはフェチじゃない。これは遊びじゃない。あたしは役を演じてるわけじゃない。あたしは新しい人生を生きてるのだ、と。あたしが知っている人、誰を取っても、あたしはトランスジェンダーの女になっている。家族にも、友人にも、同僚にも、そうカミングアウトした。もう2年近く、女性として生活してきている。そして、この瞬間、あたしは昔の男性の生活に戻るなんてありえないと感じている。たとえ、その可能性があったとしても、戻るつもりだと言えない自分がいた。始まりがどんな形だったにせよ、今はあたしは変わってしまった。完全に変わってしまった。肉体的にも、精神的にも、魂の点でも。そして、元に戻る気はない。
とうとうオーガズムに達する。全身が激しい感覚に洗われていく。全身の筋肉が無意識的に収縮を繰り返し、快感のさざ波が打ち震えるカラダ全体に放射状に広がっていく。すべての細胞が一度、死滅し、その直後に清浄されて再生していくのを感じる。声が出ている。悩ましい声。叫び声。もっと続けてとジャックに懇願してる。この感覚。言葉に言い表すことができない、身体的快感と精神的快感のふたつがつながった強烈な快感があたしを襲い、その結果、心の中に、自分のアイデンティティが何であるかがはっきりと固まる。
自分は女なのだ。ようやく、その境地に達した。そして、あたしはこの事実を変えることがないだろうと思う。