
68_Finishing the deal 「約束の完了」
「見て? できるって言ったでしょ?」
「見事だわ。感動してるって認めるわよ、アレックス。ここまでになるなんて思っていなかった」
「じゃあ、清算する時が来たってことよね? まずは、ボクとキミのふたりでお食事に行くことを考えてたんだけど。それから、ボクの親が持ってる湖のほとりの別荘に行く。今は誰もあそこに行かないから。ボクたちふたりっきりでいるときに他の人に邪魔されるの嫌だし」
「いや、ちょっと、そんなに急かさないで。感動したとは言ったわ。でも、完了したとは言ってないわよ」
「どういうこと? キミ自身が言ったことだよ。ボクは指示されたことをミスなくこなしてきたよ。この夏ずっと、キミがボクに命令したことをすべてやって過ごしてきたんだよ。こんなバカっぽいレオタードを着てきたし、一生懸命に練習してきた。髪の毛も伸ばしたし、ダイエットまで始めてる。ゲインズコーチは、ボクがこんなに体重を減らしてしまってカンカンになると思う。でも、これは約束の一部だから、してきたんだよ。ボクがバレーを習ったら、キミはボクと寝てくれるって。それが約束だよね。なのに今になって、尻込みするわけ?」
「まず、あたし、あなたとデートするとは言ったけど、それを、あたしたちが一緒に寝ると思い込んだのはあなたの方よ。でも、それは構わないわ。してもいいわよ。あなたと一緒に寝てあげる」
「ありがとう。こんなこと言うの嫌だったんだ」
「もし、あなたが約束を最後まで成し遂げたら、ね」
「え? どういうこと? ボクは完了したよ。キミもそう言ったじゃないか!」
「あたしが言ったのは、あなたがあたしの指示を完璧にやってきたということだけ。完了したとは言ってないわ。バレーのことは、演技することを言ってたの、アレックス。演技するには観客の前で踊ることが必要だわ。それが、リサイタル」
「り、リサイタル? 何を言ってるの?」
「あなたをダンス・スタジオのリサイタルに登録しておいたわ。ステキじゃない? みんなに、あなたがこの2ヶ月間にどれだけ努力してきたか、見せてあげることができるのよ?」
「で、でも、ボクにはできないよ……みんなの前でなんて……いや、できない。できないよ、サンディ。この夏ずっと、ボクは必死になって、このことを親から隠してきたんだよ。パパはボクが病気になったと思ってるんだよ。こんなに体重が減ったから。それにママも、しょっちゅう、髪を切りなさいってうるさいんだよ。それに、キミがボクに履かせ続けているパンティのこと、姉に見つかってしまったんだよ。それも加えたら、どんなことになるか……」
「別に、あたし、あなたに何か強制したことないわよ。レオタードの下にトランクスを履いてもよかったのに。まあ、バカっぽく見えるでしょうけど」
「でも……」
「これは約束よ、アレックス。あなたはリサイタルに参加する。そうすれば、あなたは望んでることをできる。もし、参加しないなら……まあ、あたし、ステージに上がるのを怖がるような男の子とデートするなんて、あんまり考えられないわねぇ」
「何人くらい観に来るの? ボクを知ってる人も来るの?」
「大丈夫。ステージからは客席は暗すぎて見えないから。それに、誰もあなただって分からないと思うわ。みんなにとっては、あなたは、可愛いバレリーナがいるなあとしか見えないから」
「本当?」
「絶対よ。だから、参加してね」
「わ、分かった。でも、何かマズいことになったら……」
「そんなことないから! 大丈夫。素晴らしい結果になるはずよ。ねえ、リサイタルであなたが着る可愛いコスチュームを持ってきてるの。見てみて。それを着たら、あなた、すごく綺麗に見えると思うわ!」