
68_Introduction 「入所」
「あんた、新入りね?」 とジェイドが言った。疑問文ではなかった。
若者は頷いた。「ぼ、ボクは……よく分からない……ここがどこかも」 彼はジェイドの丸見えになっている股間を見下ろし、目を真ん丸にした。「えっ? あ、あんたにはアレが……」
「あんた、何歳?」
「18です」
「どっから来たの?」
「ルイジアナ」 若者は気持ちを落ち着かせようと、一度、深く息を吸った。上手く落ち着けたと思ったけれども、言葉を発すると、やはり恐怖で声が震えていた。「ど、どうなってるんですか? ぼ、ボク、最後に覚えてるのは学生寮に帰るところだったんだけど……」
「女の人に会った?」とジェイドは訊いた。若者は頷いた。彼はパーティで、ハッとするようなブロンドの女性と出会ったのだった。「彼女、ここのリクルーターのひとりよ。ここの女王様のハーレムに加わるあたしたちのような若い男の子を引っかけてくるの」
「は、ハーレム?」
「ええ、ハーレム。いい、話しを聞いて。これから2日ほど、あんたには、いろんなことをたくさん投げつけられるはず。でも、忘れないで。絶対、ここの女たちが命令することをちゃんと行うこと。抵抗したら、罰を受けるから。それでも服従しなかったら、さらにひどい罰を受けることになるから。さらにそれでも間違った行動をするようだったら、連中は、あんたの家族に刃を向けるから。家族とか友人とかに。連中は、あなたを従順な奴隷に変えるためならどんなことでもする人たちだから」
「ぼ、ボクは、でも……」
「脱走する?」とジェイドは訊いた。「それは不可能。あたしも試みたわ。そして、その代償を払わされた。この状況をできるだけ利用する、その方がいいの。こう言って気に障らなければだけど、あんた、従順にしてたら、連中はあんたに良くしてくれるわよ」
「あ、あの人たちはボクに何をするつもりなの?」
「あんたを変える。ホルモンとか、いろいろ使って。1年もしたら、あんたも、あたしと同じになるわね」
「で、でも、どうして?」
「女王様は女っぽい男の子が大好きだからよ。でも、いずれあんたも分かるでしょう。実感することになると思う。しばらくすると、それが好きになるかもしれない。そうなった男の子は何人かいるし」
突然、近くのドアが開き、筋肉隆々の女性が出てきた。ジェイドは彼女の方に向き直り、深々とお辞儀した。そうしながら、彼は囁いた。「忘れないで。連中の言うことをきくこと。何を言ってきても、言うことをきく」