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写真家 (6) 

明らかに、クリスタルは、ワインが効いてきたようだった。横目で僕を見て、言った。

「トップレスにはなれると思うわ。多分ね。でも、安っぽいポルノ写真はだめよ。高品質、ハイクラス、極上の上品な写真でもポルノ写真はだめ。そんな写真、絶対、モデルになれない」

かなりキッパリと断言した。するとボブが割り込んだ。

「いや、違うよ。そういうつもりじゃないんだ。・・でも、僕はスカートの中を写した写真が好きなんだ。それは分かっているだろう? 僕が雑誌を捲ってるとき、一緒に見てきたじゃないか。知ってるだろう? ああいう写真を見ると僕がどうなるか・・・」

ボブは尻すぼみになった。

「アハハ。ええ、もちろん。鉄斧の取っ手みたいに固くなる!」

クリスタルはまたワインをぐいっと飲んだ。

・・・うーん、これって、ちょっと面白くなりそうだぞ・・・そう思いながら僕は、ちょっと脇に目を逸らし、それからまた2人に向き直って言った。

「ねえ、これ、ちょっとメイキャップをすると、もっと良くなるかもしれないよ。写真では、肉眼で見たのとは違った風に見えるものなんだ。そのずれる部分を補わなくっちゃいけないんだよ」

「なるほどなるほど」とボブ。

「なるほどなるほど」とクリスタル。

僕はメイキャップの道具入れを持ってきて、化粧用のブラシを出した。一度も使ったことがなかったが、どういう風に使うかは知っている。20センチ位の長さで、先のところに2センチ半くらいのふわふわしたブラシがついている。そのブラシを、顔料パレットの暗めの色のところに擦りつけながら、クリスタルに訊いた。

「これ、自分でやる?」

「いや、どうしたらいいか分からないもの」

いや、僕自身、どうしていいか分からなかったが、それは言わずにおいた。

「オーケー! じゃ、ちょっと前のめりになって」

クリスタルは僕の指示に従った。胸元にブラシを擦りつける。最初は注意深く。それから、胸の谷間に擦りつけた。

「山になっているところと谷間になっているところを強調しなくちゃいけないんだ。言っている意味が分からないかもしれないけど」

「アハハハハ、くすぐったいわ!」

「ああ、済まない。ただ仕事をしているだけなんだ」

僕はできるだけ専門家風に聞こえるようにした。

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