69 Blissful 「至福」
「その調子、いいわよ」と妻が猫なで声で言った。「この大きいおちんちんの上に乗るの」
彼女の顔面に唾を吐きかけ、断固拒否し、さっさと服を着て、ドアを出て行きたかった。でもできなかった。あたしがそれをできないことは、自分でも分かっているし、妻も分かってる。そして妻の彼氏も分かってる。
「いいぞ、ウォルター」と彼はペニスの根元を握った。「こいつ、デカいだろ。遠慮せず、喰らえよ」
「彼をそう呼ぶのはやめて」と妻が言った。「もう、その名前じゃないんだから」
「俺にとっては、こいつはいつまでもウォルターだぜ」と彼はあたしの体を上から下まで見ながら言った。他の何より、自分の裸体を隠したかった。女体化してしまったこの体を隠したかった。でも、抵抗は不可能だと分かっている。
「彼がこんな体の今でも、あのウォルターに見えるの?」と妻はあたしのウエストに腕を絡めた。お腹のあたりを愛撫しながら、あたしの耳に囁きかけてくる。「違うわよねえ?もう、ジャスミンと呼ばれる方がいいわよねえ? あなたもそう呼ばれるのが好きなのよねえ? そうでしょ?」
「は、はい。そうです」 その言葉が口から出るのを必死でこらえようとしたのに、そう返事してしまう。自分がいまだに抵抗しようとしてるわけが自分でも分からない。この1年にわたって、一度も勝利したことはなかった。カラダも、魂も、心も何もかも、このふたりに女性化されるがままになってきたのだ。激しく抵抗すればするほど、より悪い結果になってきた。
「それで、あなたもやっぱり、彼のおちんちんを入れたいんでしょ? ずんずん突いてもらいたいんでしょ? 違う?」
あたしは頷いてしまう。「そ、そうなんです……」 そうされたい欲望が体の中、ふつふつと湧き上がってくるのを感じる。そうなる自分が憎くてたまらないのに、彼に入れて欲しくてたまらなくなる。その肉欲、それは無視できない。だから、これまで通り、あたしはいつものことをしてしまう。つまり、屈服してしまうということ。
彼の上に乗った瞬間、気持ちが軽くなるのを感じた。そして、彼の長くて太い肉棒へと体を沈めるのに合わせて、あたしは、自分がかつてどんな男であったか、すべて忘れていく。それが一時的なことであるのは分かっている。でも、この行為をする何分間かは、あたしは、すべてを忘れ、至福の時に浸る。