
69 Combination 「コンビ」
「正直言って、あなたが思ってるより簡単だったわ。催眠術的な暗示を何度かと、時折ちょっと背中を押して、たくさん女性ホルモンを与えたら、簡単に女性化にハマって来たのよ」
「彼は、父親に見放されたことも助けになったのじゃないか?」
「それもあると思う。でも、あたしたちは、それは別に計画してなかったわね。そのことが、あたしたちにとって正しい方向に彼を押す、ナイスなひと押しにはなったけど、でも、それも全部あの男のせい。あいつは、自分の子供が立派で自立した息子じゃなくて、トランスジェンダーの娘だという恥が耐えきれなかったってわけよ」
「あのバカ。当然の報いだよ」
「父親のこと? それとも息子の方?」
「両方? ただ、願いはひとつ。上院議員がまともな娼婦になるには歳をとりすぎているってわけではないことだけ」
「女体化したあの男にも、おカネを払う人はいると思うわ。念のため言うけど、別にルックスがいいから払うっていう人じゃないわよ。親父の方が、ここにいる息子みたいなルックスになるなんてありえない。でも、珍しさという売りがあるの。考えてみて、あの男みたいなヤツがよ? 平身低頭して、あたしを買ってくださいって懇願するのよ? それだけでも、充分、売りになるわ」
「僕には、相手できそうもないな」
「でも、ゲテモノみたいなルックスになるってわけでもないわ。あたしたちにも完成体について一定の基準があるの。それにあたしたちの医師たちは信じられないほど有能。だから、なんとかなると思う」
「それにしても、僕たち、本当に僕が話し合ってると思ってる人物について話し合ってるのかなあ? アメリカ合衆国の上院議員を女性化しようってことだよ? 政治家としてのキャリアの大半を、ゲイとレスビアンの権利を否定することに費やしてきた人間のことだよ?」
「差別主義者こそ、最高の淫乱になるものなの。適切に調教されたらだけどね」
「本当にできると思ってるのか?」
「できるわよ。すでに、彼くらいの年齢の非道な夫たちを何人も女性化してきたもの」
「ふたりをペアにして売ってもいいな。父と息子ってペアで」
「奔放すぎる淫乱コンビ。それいいわねぇ」
「そうしよう。何が必要かな?」
「まずは、議員のコンピュータへのアクセス。それが手に入ったら、さっそく今夜にでも、催眠の暗示をパソコンに仕込むわ」
「その手のことに詳しいヤツを用意しよう。こいつは面白くなりそうだ」
「何度やっても面白いわよ」