69 Long summer 「長い夏」
あたしは写真を長いこと見つめていた。そして見つめている間に、後悔の気持ちが湧き上がってきた。あたしは、この1年間に大きく変わってしまったし、これからも変化していくことを知っている。大学に戻れば、彼が待ち構えているだろう。彼は、あたしをぐいぐい押して、あたしをかつての自分とかけ離れた人間へと変えていくだろう。そして、その点に関して、あたしは彼に感謝している。そういう関係が、あたしと彼の関係の本質。あたしたちはそういう人間。
これはあたしがキャンパスから離れている時は毎日しなくてはいけないことだけど、あたしは自分の写真を彼に送った。送信しながら、未来はどうなっていくのだろうと思った。彼はあたしに、昔の自分なら思いもよらなかったことをいろいろさせるだろうというのは分かってる。でも、その一方で、そういう行動が正確にどういう形を取っていくのかは分からなかった。すでに、これまでのいくつかの学期、あたしは彼に囲われたシシーとして大半の時間を過ごしてきた。ピアス、豊胸、そして貞操ケージ。それらはあたしの新しい人生の象徴。でも、この後には何が来るのだろう? 想像できない。
一度ならず、あたしは人生を変えたあの夜のことを思い出す。すごく興奮していたのを思い出す。大学に入って、学生生活を始めるところだったのに加えて、苦労はしたけど、大学の優秀な男子学生クラブに加入することを認められたのだった。何週間にも渡る後輩イジメに耐え、数えきれないほど何時間も先輩たちのわがままの言うことを聞き、しかも絶対に加入してみせると決意を確かに持っていたおかげで、あたしは完璧と言える位置につけていた。そして、あたしは入会式に出席した。これからの4年間、数えきれないほどのパーティ、可愛い女子学生クラブの女の子たち、それに、一生続くだろう友情を夢見ながら。
もちろん、実際にはそういう展開にはならなかった。そういう未来はあたしの道ではなかったのだった。あたしは別の道を進んでしまったのだった。酩酊しての醜態、間違った選択、そして自制心の低下。夜が終わる頃までには、あたしの将来のご主人様は、あたしを脅迫して従属させるために必要なすべての材料を手に入れていた。その、どのひとつもあたしは覚えていなかったけれど、写真は嘘をつかない。そして、それら写真は、恥辱の話しを物語っていた。そんな類のものが表面化してしまうのを許すわけにはいかなかった。そして、結局あたしは彼が命じることを何でもすることに同意してしまったのだった。
最初は、ただの小さな嫌がらせ程度だった。彼の服を洗濯したりとか、代わりに宿題をしてやったりとか。そういう類のことだった。だけど、2週間ほどすると、あたしの仕事のリストに、彼の体をマッサージすることが加えられた。その次にはシャワーに入って体を洗ってあげることが加わった。シャワーでの体洗いは、すぐに石鹸の泡を使って、手で仕事をしてあげることにつながった。それが、次には、口唇を使っての仕事になり、最後にはセックスへとつながった。各ステップはとても小さな変化のように思えた。すでに手を使ってイカせてるなら、口を使って同じことをするのに何か違いはあるのか、と? あたしの体の別のところを使ってイカせるのに何か問題はあるのか、と? すでに口でするのに慣れていたのだから、下半身のある部分でするのも変わらないだろう、と。自分がどれだけ前とはかけ離れてしまったか、しかも、あんな短時間で。でも、とても容易く、そのような変化を辿れなっていたのだった。
もちろん、胸が膨らみ始めた時……それは朝に飲むスムージーに入れられていたホルモンの結果なのだけど……そうなった時、彼の元から離れ、大学の相談所に行こうかと考えた。でも、あたしはそうしなかった。そもそも、そのような彼によるあたしの改造をやめてほしいと思っていたかどうかも分からない。自分はやめてほしいと思っているのだと思いたかった。だけど、そう思ったからと言って、それが真実なのだとは言えない。結局、あたしは彼に合わせ続け、体にいくつもピアスをつけたり、半恒久的な貞操ケージをつけることに同意したのだった。
写真を見ながら、いくつもの思い出が頭の中にフラッシュした。このような姿になったのを両親が見たらどんな反応をするだろうかと思った。実家に戻ってからのこの1週間、野球帽をかぶって、ダブダブの服を着て、なんとかすべてを隠すことができた。でも、夏休みは長い。いつかは、両親にもあたしの本当の姿がバレるだろうと思っている。
あたしは、1年にもなっていない前に、両親が大学に行くために郷里を離れるのを見送った青年ではなくなっている。もはや、自分は男性と言ってよいのかすら分からない。自分がまだ両親の息子と言えるかどうかも分からないし、何か他の存在になってしまったのかも分からない。
でも、一番悪いことは、あたしが、あたしを苦しめた男を切望しているという事実。彼にあたしの中に入ってほしいと思ってる。思い切り淫らに振る舞うという解放感を味わいたい。思い切り彼を喜ばすという喜びに浸りたい。そして何より、あたしは早く大学に戻りたい。
本当に、この夏休みは長い夏休みになりそうだから。