Monster 「怪物」
「で、今度は何?」
「どういうこと? これって、あたしたちが、ほぼ2年間、目指してきたことの結果だわ。彼は完成。今度は、彼を使って遊ぶのはどう?」
「それって、これまであたしたちがしてきたことじゃない? あなたが彼にチアリーダのユニフォームを着るように強制したのは、遊びじゃなかった? あたしは、彼に、バスケット・チームの選手たちに輪姦されるのを承諾させたけど、あれって、遊びじゃなかった? おっぱいが膨らんでくるのを見て、がっくり来てる彼を見たときは? その後、彼が、大きな胸を誇りに思うようになってくるのを見たときは? なんて言うか……」
「分かってるわ、サリー。すべきことは全部したと思ってるのよね? 違う?」
「だって、新しいこと、もうないわ。この2年間、あたしたちふたりで、彼を辱めたり、屈辱感を味わわせたりしてきた。ふたりで、彼を完全に女性化してきた。彼の友だちで、今も彼に話しかけようとする人は、ひとりもいなくなったわ。両親にも見放された。元の彼を知ってる人はみんな、彼は奇人だと思ってる。後は、何が残ってるの? あたしとしては、もう、充分かなって」
「あたしは違うわ。長い目で見たら、まだまだ。あいつがしたことに比べたら、全然。あいつは、こういう目にあって当然だし、まだまだ足りないの。ストラップオンで彼をヤるときいつも、あいつ、叫び声上げるけど、その時はいつも思い出してるの。あいつがしたことを。この報いは当然なんだって。その時の、気持ちってすごいわ。すごくパワフルになった気持ちになれる。あいつがアレをした後だと思うとなおさら」
「分かるわ、カーラ。本当に。あの記憶を消し去れたらと思ってるんだけど、できないの。でも、あなたも前を見たら? 彼に死ぬまでこんなことをし続けるなんて、できないわ」
「あら、そう? あいつは報いを受けるべきじゃない?」
「ええ。その通り。それに実際、報いを受けてるし。でも、どのくらいしたら、やりすぎになる? 彼は、もう、壊れてるわ。昔とは別の人間になってる。カラダも、心も、魂も。昔のジェリーは死んでるわよ。どっかにいっている」
「もっと、酷いことをしても当然なのよ」
「そうかも。でも、あなたがこれを続けたら、あなたも、彼と同じレベルの人間になってしまうわよ」
「別にいいわ。もっといい人間になろうなんて思ってないし。良いこと悪いことなんか、どうでもいいの。あたしが大事にしてるのは、自分がコントロールしてるって感じられる小さな瞬間だけ。それがあれば、どーでもいいのよ。それは瞬間だけど、あいつを相手にしてると、その瞬間がどんどん長く持続していくの。あいつに何をさせようかと考えてるときとか。あなたにも分かってくれたらと思うわ。あなたも、そうしたいと思ってるんでしょ? でも、そのためには、あいつのような人を捕まえて、あれこれさせた時の幸福感を経験しないと無理かも……」
「言ってることは分かるわ。あたしも、確かにそう。だから、こうやって手伝ってるわけだし。でも、これ以上は、あたしには無理。彼を見るたび、自分が汚れた感じがするのよ。自分が怪物になったような気がするのよ」
「あたしもそうよ。まさに、そうだから、これを止められないの」