Return 「帰郷」
「いや、あの人、彼じゃないわ。あたし信じない」
「信じなさい。絶対にトロイだから」
「な、何が起きたの? それに、そもそも、どうして彼がここにいるの? 彼、去年、卒業して……」
「彼のママが、あの事件の後、彼は逆の立場から卒業パーティのプロムを再体験しなきゃダメと思ったのよ。あなたも知ってるでしょ? ルーフィー(
参考)が絡んだジェイラの事件」
「でも、それって彼にはあんまりよ! それに、いったいどうやったら、たった1年であんな姿に変われるって言うの?」
「あたしが知ってるみたいな言い方だけど、そんなの知らないわよ。それに、彼、ジェイラが薬物を使われたとき、その場にいたのよ。彼のママは、それを聞いただけで十分たったのよ」
「でも、彼、胸があるわよ。それにあの体つき……彼、まだ、ついてるの? ……分かるでしょ、アレのことだけど」
「ベッキーは、まだついてるって言ってたわ。それに、彼は、これは全部、元に戻せると思ってるとも言っていた。バカよね。あれが元に戻せるなんて。彼、もう二度と男にはなれないのに、それすら知らずにいる」
「可哀想に。信じられる? あたしたちみんな、彼のことすごくセクシーって思ってたのよね。すごく逞しい筋肉の体。 それが今は」
「彼は今もセクシーだわ。ただ、分かるでしょ? 前と同じ意味じゃないけど」
「ひとつだけ、確かなことがあるわ。ここにいる男たちみんな、味見をしてみたがってるようだってこと。フットボールのチームメイトだった友だちですら、そう思ってるみたい。男たちみんな、彼が以前はちゃんとした男だったことなんか、全然気にしていないみたいよ」
「ま、あたしに言えることと言ったら、彼、ブラッドからは飲み物を受け取らないようにすべきってことね。さもないと、彼も、ジェイラが経験したことを身をもって体験することになるって」