The Contest 「コンテスト」
コリンはカウンタにもたれかかり、ティーを啜った。妻のフェリシアがキッチンに入ってくるのに気づき、顔を上げた。「ボクは準備ができてないよ」
フェリシアは夫の姿に頭からつま先まで視線を走らせた。そのカラダのひとつひとつの曲線を視線で愛撫するかのように。「いいえ、準備ができてるはずよ。あなたはとても素敵。他の人たちで、あなたほど素敵に見える人はいないって保証するわ。コリン、あなたはそのカラダを手に入れた。すごいわ。あたしは、あなたが勝つって信じているわよ」
コリンは頭を左右に振り、うつむいて、ティーが半分ほどに減ったカップに目を落とした。そして「したくないだ」と呟いた。
「え? なんて言ったの?」 フェリシアは、片手をカウンタに、もう片手を彼の腰に当てた。
「自分でも、これをやりたいか分からないんだよ。本当に。ぼ、ボクは、ただ前のような暮らしに戻りたかっただけ。そもそも、どうして、こういうことをすると同意したのかすら、分からないんだ」
フェリシアは引きつった笑いをした。「あなたが同意した理由なら、2千万個くらいは挙げられるわね」 そして、溜息をつき、いらだたし気に髪を掻いた。「あなたのことが信じられないわ、コリン。本当に。あたしたちが、貧困から抜け出るチャンスなのよ、これは。それとも、あの、ワンルームのアパート生活に戻りたいってこと? 不定期のバイト生活に戻りたいの? それともお金持ちになりたいの?」
「ぼ、ボクは……ボクは……」
「それが、まさに、あなたの問題だわ。優柔不断。そんなわけで、あなたは全然、男らしいところを示すことができなかったのよ。あなたを愛してるわ。本当に。でも、今の姿になってから、あなたはとても裕福な暮らしができてるようになっているの。コンテストに出なくても、そうなっているの」
「え、何? ふざけているんだよね?」
フェリシアは肩をすくめた。「マジかもね」と彼女はコリンの肩に手を添えた。「でも、そんなの関係ないわ。あなたはここまで頑張ってきた。自分の姿を見てみて。他の人たちで、あなたほど素敵に見える人なんか誰もいない。だから、あなたは出るべきなのよ。たくさんのカメラに笑顔を振りまいて、こんな素晴らしい体験はなかったと言わんばかりに胸をはって歩くの。そして、審判員の人たちが審判を下した途端に、あたしたちは、気楽な人生の道を歩き出すことができるようになるのよ」
「単純化しすぎてるよ」
「だって、単純なコトだもの。難しかったのは、今のあなたの姿になるまでだった。それなりの女性のように歩いたり、話したりするのを会得するまでが難しかった。でも、あなたは、その難しいところはちゃんと乗り越えたのよ。これから後は簡単な部分。今は、コンテストに出て優勝し、賞金をもらって、ぜいたくな暮らしを始めることだけ。それが、コンテストに出ると決めた時の計画だったじゃないの。あれから何も変わってない」
コリンはうつむいて、自分の胸を見た。「ずいぶん変わってしまったよ」
「まあね」と彼女はクスリと笑った。「でも、計画は変わってないわ。さあ、グダグダ言うのはやめて、パンティを履いて。コンテストに出て勝つの!」