70 A turning point 「分岐点」
「ほら。着たよ。嬉しい?」
「意地悪な言い方、しないで。すごくいいわよ。とてもセクシー」
「キミが着た方が、ずっといいのに」
「そうかしら。あなたに似合ってると思うわ。お化粧も、ウィッグも、なにもかも。超イケてるわ」
「キミがボクを言いくるめて、これをするようにさせたのか分からなくなっているよ。これはボクがキミのために買ったモノなのに。ボクは……これって、おかしいよ」
「どうして?」
「だって、ボクは女じゃないんだ!」
「だから? さっきも言ったけど、すごく似合ってるわ。それ以外、何が問題なの? あたしは、その姿のあなたが好きなの。それに、正直になって? それを着ると、自分が可愛いくなった気持ちになるでしょ? あなたが鏡を見た時、どんな顔をしていたか、ちゃんと見てたわよ」
「あれは、ただ……あれは何の意味もないことだよ。ボクはただエッチな気持ちになっただけ。だって、もう1ヶ月も、キミはボクに指一本触れてくれていないし……」
「じゃあ、あなたも、自分の姿が気に入ったということよね。よく分かったわ。でも、そのおかげでご褒美を得られるわよ?」
「ということは……」
「その通り。今夜、あたしとヤレるわよ。あたしはストラップオンをつけるから……」
「ちょっと待って。ストラップオン? ボクが思ってたのは……」
「時代遅れのやり方でヤルって思ってたの? 言ったはずよ、そんなのもうやめるって。そんなので、あたしはもはや、1ミリも興奮しないの。でも、この新しいやり方だと……約束するわ、あなたも気に入るって。あたしを信じて。一回やったら、もう、昔のやり方に戻りたいと思わなくなるから」
「でも……ボクは……」
「何なら、何もしないってことでもいいわよ。あたしは、どっちでもいいと思ってるから」
「イヤ! わ、分かったよ。するよ。いいね? ただ……ボクが……ボクの方が動くよ」
「いいわ。あなたなら、あたしの考え方が分かる人だと思ってた」