Choose 「選んで」
「デイル、こんなこと続けられないわ。誰かにバレたら……」
「僕は恥ずかしいと思っていないよ。キミは?」
「あたしも思ってないわ。そのことを言いたいんじゃないの。何て言うか、あなたは自分の将来のことを考えてみて、と」
「僕は考えているよ。そして将来も君と一緒でいると思っているよ」
「優しいのね。本当に、嬉しいわ。でも、お互い、周りの人たちがこのことを見逃すなんてあり得ないの。あたしは恥ずかしいとは思っていないわ。でも、みんなにバレたら……あたしが……」
「キミが1年近くホルモンを摂取してきたことを? それとも、キミが、他の人がいない時に、僕の秘書のような服装になるのが好きなことを? それとも、僕たちは1年以上も、一緒に寝てきていることを? ケイシー、僕はそんなこと気にしないよ。本当に。バレるならバレてもいいんだよ。むしろ、全部オープンにしたら、今より良くなると思う。キミも女性化を最後までやり遂げられるだろうし、それに……」
「あなたの奥さんについては?」
「彼女について、何?」
「もし、奥さんにバレたら? すごいショックになるわよ。あなたも、そうなるって知ってるはず。本気であたしのために奥さんと別れるつもりでいるの?」
「そこは……そこはちょっと厄介なところなんだ」
「そこよ。その点をあたしは考えたの。デイル、あなたは大きなことを言う。いつもいいことばかり言う。そして、あたしも時々そんなあなたの言葉を信じてしまうことがあるわ。でも、毎回、毎回、最後にはあなたはバネッサとの何の曇りもないささやかな生活に戻ってしまう。あなたは、あたしのようなトランス女と火遊びできるようにと、今の状態を掻き回そうとは決してしないのよ」
「そんな言い方、フェアじゃないよ。キミだって分かってるだろ? これって……」
「分かってるからと言って、事実じゃないことにはならないわ。そういう状態になっているのは事実だわ」
「そうじゃないとしたら? いや、僕は真剣に言ってるよ。もし、僕が彼女と別れたら? もし……」
「もしもの話は関係ないわ。仮定の話しなんかどうでもいいの。もしあなたがあたしと一緒にいたいのなら、それは素晴らしいわ。あたしも同じ気持ちだから。でも、あたしは、もうこれ以上、2番目でいるつもりはないの。この状態を秘密にしておきたいという気持ちはないの。もう、これ以上はイヤ。だから、デイル、ちゃんと決心して」
「そんなに簡単なことだったらどんなに良いか」
「簡単なことよ。あたしか彼女のどっちなのか。今すぐ選んで」