Worthwhile 「してみる価値」
「そんなに目立たないわよね? ていうか、故郷に戻ったとき、人に気づかれない? ほんとに?」
「あなたが、あたしの夫というよりも、あたしの妻のように見えてるってことに? ええ、大丈夫よ。確実にレーダーに見つからずに行けるわ」
「でも……」
「心配しないで。もう1000回は行ったと思うけど、他の人がどう思おうが関係ないの。重要なのは、あなたがいま幸せでいるかという点。で、あなたはいま幸せなんでしょう? 違うの?」
「多分……そうだと思う」
「そうだと思う? そんな言い方はヤメテ。あなたのことはちゃんと分かってるの。あたしは、最初からずっとあなたのそばにいた。あなたが初めてパンティを履いたときのあなたの顔を見たわ。美容院に初めて行った後のあなたの表情をずっと見ていた。あなたのあそこからストラップオンを引き抜くたびに、あなたがもっと、もっととおねだりするのを聞いてきた。ここまで来るまで、100万くらいの小さな段階を経てきたけれど、その小さな段階をクリアするたびに、あなたは、あたしに、これこそあなたが求めていることだと身をもって示してきたのよ」
「わ、分かってる……でも、すごく不安なの。分かるでしょう? みんなはどう思うだろう? ママ。パパ。友だち……」
「みんな、あなたが幸せになってるのを知って嬉しく思うんじゃない?」
「あなたは、あたしの友だちのことを知らないから……」
「本当にあなたのお友達なら、今のその姿がどれだけあなたにふさわしいカラダか分かるんじゃない? あなたがようやく自分自身を見つけたんだと喜んでくれるんじゃない? 海外で過ごしたこの1年は、あたしたちふたりにとって最高の1年だった。あなた自身にとっても最高の1年だった。あなたも知ってるでしょ?」
「でも、簡単じゃないの。簡単にはいかないって分かるわ」
「何事もしてみる価値があることは簡単にはいかないものだわ。それに、あなたにはあたしが、あたしにはあなたがいるでしょ? それだけで充分なはずよ?」
「た、多分……。いや、そうだね。ええ確かにそうよね。それに、もし、この体が新しいあたしだということを受け入れることができない人がいらた、まあ、その時は……多分……そういう人は、そもそもあたしの人生には必要のない人たちだと。そういうことよね?」
「その意気よ。そう、その意気!」
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