「じゃあ、警察には電話しないということだね? 君はそれでいいということだよね? 僕も、誰にも知られたくないし……」
それこそ妻が聞きたい言葉だった。「それでいいわ。あの人、別に……別にあたしを傷つけたわけでもないし、あなたも無事だったし。その点は良かったといってもいいと思うの」
「あいつが君を傷つけなかった? あいつが始めたときの君の声を聞いたよ。まるで、君に暴力をふるっていそうな声だった。その後、君があいつを大きな人とか呼ぶのを聞いたけど……」
夫はそこまで言いかけて、途中でやめた。彼は男の一物が大きかったのを知っている。ズボンの外に垂れ下がる巨大な黒ペニスを見て、それは十分に知っていた。あの男のペニスは、なえている時ですら、完全に勃起している時の彼自身のペニスよりも長かった。それでも、夫は妻が本当のことを言うかどうか知りたいと思った。
「あいつは本当に大きかったのか? ……というか、あいつのアレは?」
妻は自分の体を犯したペニスを、夫が実際に見たことを知らなかった。そこで彼女はうそをつくことに決めた。彼女はあの男とのセックスを楽しんだし、それは男のペニス・サイズによることもあったが、理由はそれだけではなかった。興奮を掻き立てる行為だったのだ。確かに彼は黒人だったが、顔立ちは端正だったし、体もたくましかった。それに加えて、とても優しかったし、彼女の欲求もよく理解していた。まさに理想的なセックス相手だったといえる。
それでも、妻は夫が何を聞きたがってるのかわかっていた。夫もやはり普通の男で、身体的な点、つまりペニス・サイズだけを気にしている。彼女はゆっくりと頭を左右に振った。夫に、あの男のペニスがどんなに大きかったか、その男に抱かれてどれだけ自分が喜んだかを伝えて、夫をわざわざ傷つける必要がどこにあるだろうか、と。
そんなことはできない。夫は前から嫉妬深いほうだったし、これで本当のことを教えたら、どんなことになるか……
「いいえ、あなた。よくわからないの。さっきも言ったけど、確かにあなたよりちょっと大きかったかもしれないわ。でも、あたし、感じなかったのよ。男には喜んでいるようなことを言ったけど、それはあの人に穏やかに家から出てもらうためだったの」
夫は、妻がうそをついたのを知り、じっと彼女を見つめた。「何を言ってるんだ? 君には本当のことを言ってほしかったよ。あの男はキッチンに入ってきた後、傷ついた僕をさらに傷つけたいと思って、僕にペニスを見せつけたんだ。それは勃起はしていなかったけれど、すごく大きいのは明らかだったよ……
……それに、あいつが僕にどんなことを言ったか知りたいと思わないか? あいつは言っていたよ。君があの男の大きな黒ペニスを見るなり、自分が上になるようにさせてくれと言ったって。上になった君はすごく激しく動いて、汗まみれになって、その汗をあいつの上に振りかけたって。やった後は、君は恍惚として、ベッドの上、ぐったりとなって動けなくなっていたって!」
夫は責めるような目で妻を見つめ、返事を待った。
妻は自分が発した声を夫が耳にしてたのは知っていたが、今は、あの男が信頼を裏切ったことも知ったのだった。
彼女はため息をつき、説明し始めた。「その通りよ。彼は……とても大きかった。大きすぎると言っていいほど。あんな大きなのでされたら、体が壊れてしまうと怖くなった。だから……だから、自分が上になる形にしてと頼んだのよ。その形なら……何とか自分でコントロールできると思って……
……最初は濡れていなかったの。もちろん、あの男を見て興奮していたわけじゃないから。だから……いきなり突っ込まれて傷つけられたくなかったの。あたしが上になったら、ゆっくりと優しくできるから。そうすれば、傷つかないと思って」