「大丈夫?」 と再びジェフは訊いた。興奮した声になっていた。
「大きいわ。でも、大丈夫だと思う。続けて」 この時も、モニカは比較的大きな声で返事した。もしリチャードが壁の向こうで聞き耳を立ててるなら、自分が誰の女なのか、彼にもはっきり分かるだろうと期待していた。
ジェフは動き始めながら、肌を合わせるようにしてモニカの体に覆いかぶさった。モニカにとって、男性の肌が自分の腹部から胸の肌と擦りあうのを感じるのは、これが生まれて初めてである。季節は夏で、夜だとは言え、部屋はかなり暑かった。肌を合わせて数秒もたたずして、重なり合うふたりの肌から汗が吹き出した。モニカには、その汗が自分の汗なのかジェフの汗なのか分からなかった。
ジェフは、自信がわいてきたのか、出し入れのストロークを次第に強くしていった。ベッドがギシギシと軋み音を出していたが、彼は気にしない。
一方のモニカは、この行為を楽しんではいたが、軋み音は気になる。……だけど、この音も隣に聞こえてるはず……。そう思ったモニカは、あえて気にしないことにした。
「んんん……ああぁぁぁ……」
「大丈夫?」 ジェフはまたも心配の言葉をかけた。
「うん、大丈夫。続けて……」
ジェフは出し入れを続けたが、一時、ペースを遅くした。「シーツに血がついたかなあ?」
モニカは、少しだけ快感を感じ始めていたのだけど、この言葉に、それが急に冷めていくのを感じた。「後でチェックできるわ。やめないで」
ジェフは一度彼女にキスをし、再び動き始めた。このキスは、ふたりがベッドに入ってから初めてしたキスだった。このキスがあって、ようやくにして、ふたりの行為がロマンティックなものになりつつあった。
その時までは、肉体的行為ばかりでロマンスの意味合いがなかったので、まさにそれゆえに、モニカは声を上げ続けていたと言える。だが、この後は、ふたりの親密な愛の交歓をリチャードに聞かれるのは避けたい気持ちがまさり、彼女は、できるだけ声を立てないように努めた。
だが、いかに努めようとも、くぐもった声は漏れており、壁を通って、隣の部屋にも届いていたのである。リチャードは、クローゼットの中に立っていた。この位置がふたりのベッドに最も近い位置だったのである。壁に耳を立てている彼には、すべてが聞こえていた。音を聞きながら、自慰をしていた。
ベッドが軋み音を立てていても、モニカの声を消すまでには行かなかった。とはいえ、軋み音は、ジェフが花嫁に行ってる出し入れのリズムを正確に伝えている。リチャードは、軋み音のリズムに合わせて右手を動かしていた。
ジェフはどのくらい持続したのだろうか。モニカに完全に挿入してから、おそらく3分程度だっただろう。突然、彼は、かなり大きな唸り声をあげ、溜まりに溜まったものを彼女の中に放ったのだった。その直後、彼は急に体から力が抜けモニカの上、ぐったりと横たわった。彼のペニスもゆっくりと硬さを失っていく。
モニカは夫の体にきつく抱き着きながら、ため息をついた。初めてのセックス。バージンの花嫁として夫の愛に誠実に応えたセックス。しかし、これはオーガズムに至ることはできなかった。至るも何も、それに近づくことすらできなかった。
行為を始めるときもそうだったが、行為が終わった時も、ジェフはキスをするのを忘れていた。半立ち程度に柔らかくなりつつも、時々、ジェフは腰を突き出し、残っているモノを最後まで注ぎ込もうとしていた。やがて、5分ほどした後、モニカが言った。「降りてくれる? きれいにしなくちゃ」
「そのままでいて。僕が電気をつけるから」
ジェフがベッドから降りるときも、ベッドはきしんだ。ジェフは、自分がモニカにしたことを見てみたいと思い、ベッドサイドのランプでなく、部屋の明かりをつけるために、ベッドから降り、壁のところに行きスイッチを入れた。
急に明るくなって、まぶしさにモニカは目を覆った。一方のジェフには、無防備に脚を広げたままのモニカの全裸が目に入った。
ジェフは彼女の体を見つめつつ、目にしているのが信じられない気持ちだった。モニカが魅力的な体つきをしているだろうとは思っていたけれど、この瞬間まで、どれほどの美しさなのか、彼は知らなかったのである。仰向けになっているにもかかわらず、張りを保ちつんと盛り上がる乳房。胸と下半身、興味を惹きつけるふたつの部分をつなぐウエストは、胸の大きさ、女性的な下腹部の丸みと比べると驚くほど細い。そして、彼女の最も大切な部分。今は血がついているものの、愛らしく見えた。たとえ写真でしかそれを見たことがなかった彼にも、そこの部分の愛らしさは明らかだった。
そして、ジェフは再び勃起してくるのを感じる。
「そ、そこ……血がたくさん出てる?」 モニカは、壁を隔てたリチャードに聞こえる程度の声で聴いた。そのリチャードは、ジェフとシンクロさせて射精していたのであるが、いまだ半立ちのペニスをしごき続けていた。
……くそっ、あの女、バージンだったのか。彼女の処女を奪えたとは、ジェフのやつ、運がいいぜ……
血が出ているかもしれないし、アソコの中も外も、濡れている感じがしていたので、モニカは、血がお尻や太ももの裏にまでついてしまうのを恐れて、脚を閉じなかった。大の字になって、乳房も局部も晒したままでいる他なかった。もちろん、それは、彼女の裸体を初めてまじまじと見るジェフにとって、大きな喜びでもあった。
確かに、彼女の下のシーツには血の染みができていた。ジェフは、気にすることはないと言ったけど、モニカはそうはできず、素早く立ち上がり、ベッドからシーツを引きはがした。浴室にもっていって、冷たい水で洗い落すつもりだった。
モニカにとって、今は夫になったとはいえ、男性の前に全裸で立ったのは、この時が初めてだった。変な感じがしたけれど、どこか、興奮するところも感じた。どうしてもジェフの股間に目が行き、凝視してしまった。ツンと立った男性器を初めて見た。その姿が素敵だとも感じた。
でも、その時モニカは、浴室に行くには、ドアを出て右に曲がり、リチャードの部屋の前を通らなければならないことを思い出した。それは避けたいと思った彼女は、ローブを羽織り、シートを抱えつつ、浴室ではなくキッチンのシンクで洗おうと、ドアの左に曲がり、キッチンへと行った。そして水を流し、血の付いた部分を揉み洗いしたのだった。
寝室に戻ったモニカは、乾かすためにシーツを椅子の背もたれにかけた。「あたしたち、掛け布のシーツに寝なくちゃいけないわね」
「ちょっと、垂れ流れているみたいだよ」とジェフは指さした。
ハッとしてモニカは下を向き、ジェフが出した白濁が太ももの内側を伝って流れているのを見た。モニカは初めて、セックスというものが、特に女性にとっては汚い結果になることもあることを学んだのだった。