2ntブログ



弱みにつけ込む上司 (5) 


モニカはハミングしながらブラッシングを続けていた。意識して回数を数えていたわけではなかった。ブラッシング自体が好きだったから。60回、70回、80回……。その間、リチャードは好きなだけモニカの美体を堪能することができた。

もういいかなあ……モニカはそう思い、ふと鏡に映る自分の顔から、鏡の隅へと視線を向けた。そこにはリチャードの姿があった。ドアの向こうからこっちを見ている!

モニカは白いパンティだけの姿だった。慌てていたし、どうしたらよいか分からず、ハッと立ち上がったモニカは、両腕で胸を隠し、そのままリチャードの方へと駆け寄った。近すぎるとは思ったけれど、ドアを閉めるためには、そうする他なかった。そして、意識的に目を合わさないようにしながら、何も言わずドアを閉めた。リチャードの目の前でドアがバタンと音を立てる。

ドアを閉めた後、モニカはドアにもたれかかった。乱れた呼吸を取り戻そうとする。顔は火照っていたし、心臓が高鳴っていた。

結婚して5日目なのに、またもこんなことが! ジェフの上司は式の後、口に舌を入れ、お尻を揉んだのに、今は、ほとんど全裸に近い姿を見られてしまった。

モニカがドアを閉めようと走ってきたとき、リチャードはどんな顔をしていたのか? 彼は、いやらしい顔でニヤニヤして、モニカを見ていた。謝る言葉はもちろん、「おっと!」と言った当惑の言葉すら言わなかった。モニカは、なんだかんだ言っても、ここはリチャードの家なのだし、そもそも、ドアを開けっぱなしにしていたのは自分なのだから、リチャードを責めるわけにもいかないと思った。

リチャードがかなり前からモニカの裸身を見ていたことを彼女は知らない。しかし、鏡を通して露わな胸をしっかり見られていたのは間違いないし、立ち上がってドアを閉めに走った時、全身を見られたのも間違いなかった。加えて、ドアを閉めるために手を伸ばした時、右側の乳房は無防備になっていて、1メートルも離れていないところで、リチャードの目の前に胸をすっかり晒していたのも間違いなかった。

結婚式の時に不自然に濃厚なキスをされ、体を触られたことを、モニカはジェフに話さなかった。それと同じく、この時のこともジェフには黙っていた。

それから2日ほどの間に、何度かモニカはリチャードとすれ違ったし、キッチンテーブルで一緒に食事をすることがあった。彼女はリチャードに見られるたびに、顔を赤らめた。そのたびに、ジェフがそれに気づかないようにと願った。

実際、モニカの夫は、若いだけあって、自分の妻と自分の上司の間で、何か気まずいことが起きてることに全然気づいていなかった。リチャードはまだ29歳であるが、ジェフは19歳である。彼から見れば、リチャードは上司であり、仕事をくれたばかりか、住処も与えてくれ、さらには、仲人役も買ってくれて、新婦も一緒に住むのを許してくれた尊敬すべき大人としか見えなかった。

ある時、一緒に食事をしていたとき、リチャードがほのめかしたことがあった。「ちゃんとしたコネ」があれば、シカゴには、もっと良いペイの仕事があるんだが、とリチャードは言った。

「どうして、リチャードさんは、その仕事を受けなかったんですか?」 とモニカが訊いた。

「いや、俺もシカゴに行って、ちょっと仕事に関わったんだよ。だけど、ああいう大都会はどうも性に合わなくって」

だが、リチャードは、正確に事実を言っていたわけではない。彼は組織のために身代わりとなってムショ暮らしをし、そのことによって組織への内通者ではないことを証明したのだった。組織は彼にふたつ仕事を提示し選ばせ、彼は車関係の仕事を選んだのだった。

表向きは駐車場の管理という仕事だが、その裏で行っている仕事のおかげで今の自分があるとリチャードは力説した。「それにね」とリチャードはウインクして付け加えた。「こういう田舎だと、お偉いさんたちがうろうろすることもなくてね。何をするにもいつも監視されたらたまらんもんな」

それはそうかもしれない、とモニカは思った。リチャードは高級車に乗ってるし、家も、寝室がふたつあるアパートで、家具もちゃんと整っている。服はいつもいい服を着ているし、いつ夜遊びに誘われても問題ない様子で、充分現金を持っている。

ただ、モニカには見えていなかったのだろうが、リチャードが乗っている「高級車」とやらは、駐車場から選んで盗んだ車なのだった。

そして、結婚してから最初の1週間が過ぎようとしていたとき、それが起きた。

その夜、ジェフは頑張った。その前日はセックスができなかったので、その挽回をしようとしたのだった。ジェフとモニカは、たった今セックスを終え、ベッドに横たわっていたところである。この時も、ベッドはギシギシと軋み音を立てた。そして、この時もジェフの持続時間は、あまりにも短かった。

そして、この時も、後戯と呼べることはほとんどなされなかった。まだ若いモニカには、自分にとって何が不満かが分からなかったが、後戯こそ望んでいたことだった。満足してぐったりと横たわる夫に、特に何か話しかけるわけでもなく、ただ「おやすみなさい」とだけ言う。そしてため息をつき、起き上がり、廊下に出て静かにバスルームへと向かった。

ジェフは多量に射精する。タオルを使うのは便利だけど、ちゃんと流さないと、事後、何時間かした後でもあそこから垂れ流れてくることがあった。だから、結局は、セックスの後にバスルームに行くのが、ほぼ、日常的になっていたのだった。モニカは、トイレの水を流すのが嫌だった。水を流す音をリチャードに聞かれると思ったからだ。

1時間も間を置かずしてトイレの水を流すとしたら、それはひとつのことしか意味しない。その1時間の間にセックスが行われたということだ。

リチャードは、モニカたちが来る前は、廊下に電気は点けず、トイレに行く時も暗闇のままで歩いていた。トイレには3歩くらい歩けば行けたからである。だが、ふたつ目の寝室は、リチャードの部屋よりもトイレからは離れていた。

「暗くて歩くとき困るだろうから、廊下の電気は点けたままにしておくよ」と彼はジェフたちに伝えた。だが、リチャードは別にジェフたちのために明かりをつけたままにしたわけではない。彼は、モニカが部屋の前を通るところを見たかったから、そうしたのが実情だ。

この日、リチャードは、いつものようにモニカが通るのを覗き見するつもりはなかった。彼は、モニカがバスルームから出てくるところを待ち伏せするつもりでいたのである。ペニスを握りながら、ふたりがセックスする音を聞いていた。隣から聞こえてくる音から、ふたりが行為を終えたの正確に知っていた。

本当に価値があることには、それなりに待たされるものだからな……

今夜は、ジェフが唸り声をあげるのを聞いても、リチャードは射精をしてはいなかった。少しだけ開いたドアの向こう、モニカが廊下を行くのを見た。そして、モニカがバスルームに入った直後、彼は自分の部屋から出て、バスルームへと向かった。彼はローブを羽織っており、腰のところは布紐で閉じてはいたが、ローブの下は素っ裸だった。

これまでの経験から、ジェフは、行為の後、ずっとベッドに横になったままでいる。リチャードにはそれが分かっていた。

モニカはかなり長い時間、バスルームにいた。

「ジェフにたっぷり注ぎ込まれたのかな? うへへ……」 リチャードは、そんなことを思いながら、音を立てずにバスルームのドアへと近づいた。廊下に立ったままではあったが、中から、モニカの排尿する水しぶきの音が聞こえてきて、彼はにんまりした。さらには、トイレットペーパのロールが回る音も聞こえてくる。脚を広げて股ぐらを拭いてるモニカの姿を想像し、彼はいっそう笑みを大きくした。

リチャードは、家の中に女性がひとり加わっただけで紙の消費量が大きく変わったことに気づいていたし、トイレットペーパーも新たに買い足している。だが、そんなことは気にならない。消費された紙の大半が、この家の中でセックスが行われていることの証拠と言えるのだから。むしろ、卑猥な想像の糧になることだった。

手をローブの中に入れペニスを握りつつ、リチャードはドアが開くのを息を殺しながら待った。

長い時間、無音状態が続いた。多分、もっと洗い流す必要あったんだろうとリチャードは思った。そして、2分ほどの無音の後、再びトイレット・ペーパーのロールが回る音が聞こえた。そして再び、無音になった。次に聞こえたのは、トイレの座席板がバタンと鳴る音だった。おそらく、モニカが立ち上がる時、尻頬に座席板がくっつく形になり、それが元に戻るときの音だろうと想像できた。

「うわっ、こいつは色っぽいぞ!」 リチャードは分身を撫でながら思った。水を流す音がするのを聞いたリチャードは、音を立てずに自分の部屋の前に戻り、モニカが出てくるのを待った。

これも、この1週間の経験から、モニカはトイレの流れる音が止むまでバスルームから出てこないことを知っていた。リチャードは自室のドアのドアノブを右手で握ったままでいた。その方が、わざとらしく見えないはずだと。たった今、廊下に出てきたところのように見えるはずだと。

「あっ!」

上手くいった。モニカには、リチャードが寝室から出てきたばかりのように見えた。特にドアノブを握ったまま、彼女を見て驚いたような顔をしていたから。彼のローブはゆったりとし、シルクっぽい布地のローブで、腰ひもで閉じているだけだった。廊下の薄暗い照明ではあったけれど、胸毛が露わになっているのが見えた。

「ごめんなさい」とモニカは小声でつぶやいた。彼女のローブはタオル地のローブで、下には何も着ていなかった。モニカは薄地のローブの前をしっかり引き締め、急いでリチャードの横を通り過ぎようとした。彼女が一番避けたいと思っていた事態が起きようとしている。

リチャードは、強引に手を前に突き出し、片腕で壁を突く形になって、モニカの行く手を遮った。モニカは立ち止った。小声以上の声を出したいとは思わなかった。夫に聞かれて、事を荒立てたいとは思わなかったから。幸い、ふたりの寝室はドアふたつ分離れたところにあったし、寝室を出るとき、ドアを閉めてきていたので、ジェフに聞かれる心配はなさそうだった。


[2019/06/08] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する