Equality 「平等」
「あら、似合ってるわよ」
「ほんと? ありがとう。まあね。でも、まだ全部に慣れてるってわけじゃないけど」
「ずいぶん慣れてるように見えるけど? 平等法が施行される前は、あたし、ハイヒールを履いて歩くなんてほとんどできなかったわ。まして、そんな高いヒールのなんて無理だった。でも、お兄さんは、もう何年も履き慣れてるように履いてるじゃない」
「実際、他に道がないもの。サマンサさんが会社のトップになってからは、一種、彼女のやり方でしか許されない感じで、しかもサマンサさんは、ハイヒールを履く男性社員がお気に入りだから」
「あたしも、そういう人がお気に入り」
「やめてよ。自分の妹からそういう言葉を聞くとは思ってなかったわ」
「ちょっと、よく考えて。お兄さんはもっとひどい言葉を聞いてきたでしょ? それに忘れないでね。今はあたしがお兄さんの保護者になってるんだから。お兄さんは、あたしが言うことをしなくちゃいけないの。少なくとも、お兄さんのことをちゃんと見守ってくれる奥さんを見つけるまでは、あたしが保護者」
「どうして忘れられる? 今はエスコートする人なしでモールに行くことすら許されていないんだから」
「だからこそ、お兄さんはお世話をしてくれる女の人を見つけなくちゃいけないの。あたしだって、いつまでもここにいるつもりはないんだから。それに、どうなるか分からないけど、お兄さんだって、一生独り身でいたいとは思わないでしょ?」
「そのことは話題にしないでいてくれる? もう仕事に行かなくちゃいけないわ」
「あたしが話したいことは何であれ、お兄さんも話し合わなくちゃいけないってこと、もう一回、指摘しなくちゃいけない? ジェンダー関係省に自分の兄のことを報告しなくちゃいけなくなったらイヤだもの」
「アレックス、そんなこと、たとえジョークでも口にしないで!」
「アレクシス様か、女王様でしょ? 女神様と呼んでもいいんだけど、あたしも、さすがにそれはちょっとやりすぎだと思うけど」
「お願いだから、まじめに考えてくれる? もし、誰かに聞かれたら……」
「落ち着いて。誰もいないから。ただ、お兄さんは、お世話してくれる女性を探すつもりなら、もうちょっと一生懸命にならなくちゃダメと言ってるの。今のその服装、多分、それはそれでまあいいかなと思うわ。でも、女性の視線をとらえるには、かなり地味すぎるわよ」
「どういうこと?」
「今日の午後、ショッピングに連れて行ってあげると言ってるの。お兄さんの服装にもうちょっとスパイスを効かせてあげなくちゃ」
「また?」
「ええ、そうよ。さあ、もう文句はヤメテ。さもないと、お兄さんにお仕置きをしなくちゃいけなくなるから。お兄さんが、公の場でスパンキングされるのすごく嫌がってるのは知ってるわ」
「分かったわ。アレクシス様」
「それでこそお兄さん。さあ、出かけましょう。遅くなったらイヤでしょ?」
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