父は、座って笑い続けるジョイスを見た。
「お前、一体どうしたんだ?」
ジョイスは何か言おうとしたが、また前屈みになって発作的に笑い出してしまうのだった。ようやく、お腹を押さえ、何とかしゃべることができるようになったジョイスは父を見て言った。
「あの日、キースが家を出ていった後にテッドが言ったこと思い出して」
だが、その後の言葉はジョイスの口からは出てこず、ただ父もジョイスも笑い続けるだけだった。僕は2人を見ていたが、しばらく待って、テッドが何と言ったのか訊いた。父が教えてくれた。
「どうして、こんなに可笑しいか、理解するには、あの場にいないと分からないかもしれないけど、話してみるよ。お前が出ていった後、テッドは、いまお前がいるところに立っていたんだ。そして、偉そうに胸を張ってこう言ったのさ。・・・
『まあ、俺たちなら、この状況を何とか切り抜けられるさ。あんなウインプ男が勝つなんてあり得んからな。あいつは、もう二度とシンディたちには会わせない。俺も男だ。俺の女たちに、家計を支えるために体を売らせるなんてことは決してさせない。それにだ、この家で一番の男が誰かははっきりしてるし、俺が来てから、ずっと俺が一番だったというのは明らかだからな』
・・・まあ、テッドは結局、誰が一番の男かというのを逃げ出すことで証明したわけだし、お前は、これからテッドの元の女たちとセックスするばかりでなく、お前に体を売ることにもなるわけだがな。しかも、テッドの妻だったジョイスもお前に対して娼婦のような振る舞いをしている。テッドは、お前の妻のシンディにそういう振る舞いをするように求めたわけだが、それとまったく同じように」
ジョイスはようやく笑い涙を拭き、父も玄関へと向かった。僕は父に鍵を手渡した。
「これは前の家の鍵だよ。大半の家具は元どおりにしてあるし、売ってしまった家具も買い戻して、前の家のようにしてある。家具の多くは、家の近くのリサイクル店で売られているのを見つけたんだ」
そう言うと、父は僕を抱きしめ、ありがとうと言い、さらに、小さな声で、「お願いだから、私を辱めないでおくれ」と言った。
「そんなことをすることは考えていないよ。ただ、僕やお父さんにとって、辱めを受けるということがどういうことなのか、後で僕とお父さんで話し合ったほうがよいと思う」
父は頷き、玄関を出ていった。