電話会社の男は、ちょっと名残惜しそうにドアのところで立ち止まった。モニカは、特に何も考えず、手を差し出し、握手を求め、男はその手を握った。「ありがとう」とモニカは言ったが、男は単なる握手にしては少し長すぎる時間、彼女の手を握っていた。
モニカは、ドレスの薄い生地を通して、勃起した乳首が男に見えているのを、はっきりと自覚していた。
「こちらこそありがとう」と男は手を握ったまま答えた。「奥さんのおかげで、私の今日一日が明るくなりましたよ」
モニカは、危うく男を自分に引き寄せそうになった。本当に危なくそうしそうだった。何とか自制心を駆り立て、彼女は顔を赤らめながら手をひっこめた。「それじゃあ。本当にどうもありがとう」
モニカは男が階段を降り始め、いったん立ち止まり、こちらを振り返り、手を振るのを見た。男はしばらく彼女の全身を眺めた後、彼は再び階段を降り始めた。モニカはそれを見届けた後、ドアを閉め、溜息をついた。
あの人は、スカートの中、太ももの奥の下着のところまで全部見ていたはず。そこまでは、モニカは確信していた。
彼女が知らなかったのは、男が階段の途中、彼女を見上げた時、少し脚を広げて立つモニカの脚から、脚の付け根に至るまで、しっかりと見ていたということだった。部屋の奥から差す日差しを受けて、彼女の薄地のドレスは、半透明の状態になっており、男に彼女の下半身の輪郭をはっきりと見せていたのだった。
パンティの中、陰毛で盛り上がってる部分ですら見えていた。もし彼女がパンティを履いていなかったら、男は、彼女の陰唇の形も見ていたことだろう。
電話会社の男が帰った後、モニカは受話器を取った。この地域は、まだ直接通話ができなかったので、交換手が出てくるまで10秒ほど待たなければならなかった。
「交換さん? 長距離通話をお願いします……」
モニカの両親が通話代金を払ってくれてたので、コレクトコールをする必要はなかった。
電話がつながり、モニカは母親と話しをした。両親とも元気だと知った。
長距離通話のことについて聞いたら、母親は、リチャードが出張したときとか、彼が電話をするなら、コレクトコールでしたほうがいいと答えた。というのも、ホテルの部屋からの電話は余計な料金を加算されるものだからと。でも、コレクトコールをするにしても、できるだけ会話を短く切り上げなくてはだめだとも。
ともあれ、モニカは、もうアパートにひとりきりで孤立することはないと思った。長距離電話をかけると分刻みで話しをしなくちゃいけないし、おカネもかかるのは事実だけど、ジェフがシカゴに出かけたときも、話しはできる。コレクトコールを使わない場合、公衆電話で25セント硬貨を山のように積み上げておくか、後からホテルにチャージされることにはなるけれど。
電話を設置した翌日、ジェフは再びシカゴ出張を命ぜられた。そして、再び、モニカは夜の間、アパートにひとりきりになる日が来たのだった。
階段のきしむ音を聞き、モニカはカウチから飛び跳ねるようにして、立ち上がった。リチャードがまた来てくれた! モニカは、彼が来たら、この前と同じことをするつもりでいた。もう抵抗したり、ためらったりはしない。あの電話会社の男の人のせいで、すっかり、その気になってしまっていた。ジェフは疲れていたのか、出張前夜に彼女を抱かなかったことも、モニカが高まっていた原因になっていた。
ドアの前、モニカはドレスの上のボタンを外した。胸の谷間が見えている。
ノックの音が聞こえ、わざと2秒くらい待った後、モニカはかすかに笑みを浮かべながらドアを開けた。だが、その笑みはすぐに消えた。「え? 何?」
ドア先にいたのはリチャードだったが、彼の他にもうひとり、男性がいたのだった。とても大きな体格をした男性だった。そびえ立つようにしてモニカを見下ろしている。リチャードよりも10センチ以上背が高い。