「さて・・・この3枚目の写真は特に興味深いですよ、違いますか?」
スティーブは何気ない会話をするような口調で訊いた。
「これを見れば、僕の妻が、ラファエルの夫婦問題を解決するためにどれだけ親身になって助けているか分かりますよね? そうでしょ? ああ、バーバラ・・・君は彼の問題解決のために驚くべきことをしているようだね。彼の指は君のスカートの中、ずいぶん上のところにきている。下着の中に入れていたのかな? ひょっとすると、あそこの中? ラファエル氏は顔に笑みを浮かべているけど、それから察するに、彼は、その夫婦問題とやらから脱することができているようだね。そうじゃないかな?」
スティーブの声に棘のある調子が増えてきていた。彼は自分を抑えつけ、リラックスしようとした。
「違うわ!」
バーバラが叫んだ。
「彼は・・・触ってなんかいなかったの・・・そんなところを・・・それに、やめてって何度も言ったのよ・・・」
バーバラは、そう言いかけたものの、部屋にいる誰もが同情していないのを見て、反論をやめた。
「ううむ・・・」 スティーブは考え事をしているようにうめいた。「話してくれないか、バーバラ? つまり・・・その・・・どんな権利で、この人でなし男は、僕の妻の脚や尻をいじって楽しめると思ったのか、まるで長い間、離れ離れになっていた恋人のように、君にキスをしてもよいと思ったのはどうしてか? ちょっとしたヒントだけでもいいから、ここにいるみんなに話してくれないか? 説明してくれないかなあ? 僕は是非とも知りたいんだよ」
バーバラは頭を左右に振るだけだった。
「その写真に写っているようなことじゃないのよ・・・私たちは、ただ・・・」
「バーバラ・・・バーバラ・・・」 2人がけソファに座るリディアが声をかけた。「お前、それでは自分のためにならないんだよ」
「お母さん!」 ダイアンがカッとなって叫んだ。リディアを睨みつけながら言った。「お母さんは、邪魔はしないって言ったじゃないですか!」
「ええ、ええ、わかりました。そうしましょう!」
リディアは軽蔑するような口調で答えた。不満そうな表情から侮蔑する表情に変わりながら、ソファの背もたれに背を預けた。リディアとダイアンの一幕のおかげで、バーバラは気持ちを落ち着かせることができた。
「ええ、分かったわ。認めます」 憮然とした表情でバーバラは答えた。
「確かに、私は彼にやめさせるべきだったわ。でも、この写真を見ても分かるとおり、私たちはひと目につく場所にいたの・・・だから、何と言うか、全然違うのよ、2人でどこかのホテルに入っているとか、そういうことじゃ・・・」
バーバラは急に小声になった。これらの写真でみんなが見たこと以上の出来事をうかがわせるようなイメージを引き合いに出すべきじゃなかったと、遅まきながら気づいたからである。だが、バーバラは、あの川辺の公園での出来事を思い出し、気力を奮い起こした。あそこには、こんな写真を撮るようなカメラマンはいなかったはず。悔やみ反省する口調でスティーブに答えた。
「スティーブ・・・こんな誤解を招くようなことになってごめんなさい・・・本当にすまないと思っているの。でも、そんなに神経質になるようなことじゃないのよ。あなたは私たちが公園にいたのを見た。そうよね? 私たちはただおしゃべりをしていただけ・・・あなたが見たのはそれだけだったのよ」
バーバラは、何も証拠がないと確信していた。確かにスティーブは疑念を持っているが、何も証拠はないはず。
「本当に? 何もなかったと?」 スティーブは落ち着いた声で訊いた。