A debt 「負債」
「さあ、起きて。来週、新しい仕事を始めるまでに、ハイヒールをちゃんと履けるようになってもらいたいんだから」
「お願いだよ、カルラ。もう、ボクはじゅうぶん教訓は得たよ。もう、こんなことをする必要はないよ」
「教訓?」
「ボクは浮気をすべきじゃなかった……あのダンサーと。ボクは……」
「ストリッパーと呼んだ方が良いんじゃない? それとも、お望みなら、売春婦とでも呼べば。どっちの呼び方も当たってるし。なんだかんだ言って、あの女、カネのためにあんたと寝たんだから」
「ボクはいろいろ前のように戻したいだけなんだよ」
「前のように……どうやったら戻れると思ってるの?」
「い、医者の所に戻るとか。この手術を全部、元の状態に戻すとか。こ、このタトゥも消してもらうとか……男に戻れるんじゃないかって」
「面白いことを考えるのね。ねえ、話してくれる、アレックス? 男に戻ったら、そのおちんちんで何をするつもり? 良い子でいると思ってるの? それとも、前の状態に戻るつもり? 言いたくはないけど、あなたの過去の行状からすると、とても、前者になる確信は得られそうもないわね」
「い、いい娘に、いや、いい子になるよ! いい子だよ。カルラ、君のためにいい子になる。本当だよ! 誓って、ボクは完璧な夫になる。そして……」
「妥協案があると思ってるの」
「だ、妥協案?」
「ええ。あなたを元に戻してあげる。ただし、あなたがその費用を全部稼ぎ出すまで、それはお預け」
「費用を全部? 元々、あのおカネはボクの……」
「あなたがあの娼婦と出会ったあのストリップ・クラブで働くことね。ちなみに、それがあなたの新しい仕事よ。まだ、話していなかったかしら? 元々は、死ぬまであなたをあそこで働かせるつもりだったけれど、あたしも少しは慈悲の心を感じたの。あなたは、あたしがこの教訓をあなたに与えるために使った全額を払い戻してくれる時まで、あそこで働くこと。それに、もちろん、その逆のことをするのにかかる費用も加えてね。それは忘れないようにしなきゃいけないわね」
「で、でも、それだと何十万ドルにもなるよ。ボクはずっとあそこで働かなくちゃいけなくなる……」
「何年も。そうよ、何年も。多分、それが全部終わったら、あなたもずっと良い人になっているでしょうね。まだ、疑っているけど。でも、多分、あなたはあたしを驚かせてくれるような気がするわ」
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