Hobby 「趣味」
「くそッ」 ドアが開く音にボクは小さな声で悪態をついた。ボクの彼女は出張に出ているはず。だれど、振り返らずとも、その人が彼女だと分かった。他に考えられない。でも、振り返ると、予想していた怒りの顔は見えなかった。確かに、入ってきたのは彼女だったが、彼女の顔は怒りではなく、笑みを浮かばせていたのだった。訳知りの笑み。
「知っていたのよ。前からね」
「え、なんて?」 ボクは体を隠そうとしながら答えた。彼女の服を着ていることを、女性のように見えていることを隠そうとしながら。無駄なことだったけれど。
「あなた、隠しおおせている自分がすごく賢いって思っていたでしょ?」 彼女はますます嬉しそうな笑顔になりながら、部屋に入ってきた。「でも、分かっていたのよ。最初、あたし、気が狂ったのかと思ったわ。だって、あたしの服、ちゃんとどこにしまったか確認したのに、違うところにしまってあるんだもの。それが何回も続いてて。だから、分かったの。あなたが着てたんだって。でも、あなたが着てる現場を押さえたいとは思ってたわ」
「なぜ?」 体を隠したい気持ちを押さえて、無理やり両腕を降ろした。否定しても無駄だと思った。彼女は全部知っている。ボクのディープでダークな秘密を全部知ってるんだ。そうなったら、ダメージをどれだけ減らせるかへ方針を変えるべき。「これからどうするつもり?」
「その格好になっている時、自分のことを何て呼んでるの?」
ボクは混乱して目を細くした。それを見て彼女は笑った。「だって、女の子の名前もあるはずでしょ? 何ていう名前なの?」
「し、シモーヌ……」 ボクは白状した。
「シモーヌ……」と彼女は繰り返した。「何て可愛いの! これからどうするって訊いたわよね? いま、すごくナーバスになってるんじゃない? あなたをこのまま針のムシロ状態に置いておくのも楽しいけど、これからどうするかを教えないっていうのも、残酷かもしれないなって思ったわ。だから言っちゃうけど、あたしは、あなたにあなたが本当にしたいことをさせてあげるつもり。あなたをシモーヌにさせてあげることにするわ」
「え? ぼ、僕がドレスを着てもいいということ?」 ボクはまだ混乱していた。
「いいというか、それ以上よ。あたしもワクワクしてるの。これから、ものすごく楽しいことができるんじゃない? 一緒にショッピングに行ったり、ダンスに行ったり。ふたりで、男たち相手にちゃらちゃらしたりできるし……」
「お、男たち? ボクは……知っての通り、ボクはゲイじゃないよ」
「あなたは女の子なの。他の人を欺くために男のフリをするのには付き合うけど、あなたとあたしのふたりだけの時は、あなたはシモーヌ。と言うことは、あなたはあたしが言うとおりにしなきゃいけないということ。それがイヤなら……そうねえ……あなたのお友達やご家族も、あなたの秘密の趣味について何か知りたいと思ってるんじゃないかしら? じゃあ、そこにあるハンドバッグを持って。一緒にモールに行きましょ」
If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station
https://thefeminizationstation.com/home/