少し経ち、母が出てきた。明らかに泣いていたようだった。僕は母を見て言った。
「全部、取りやめにしたい?」
「いいえ! 私たちにはお金が必要なの。・・・ところで、ジョイス、お父さんはどこ?」
「知らないわ。ただスーツケースを持って来て、私にキスをして、私の離婚の審問会の場で会おうと言って出ていったわ」
母は僕の顔を見ながら、目にみるみる涙を溜めていた。精一杯、自分で自分を支えようとしているのが分かった。
「・・・そう・・・どうやら、これまで以上にお金が必要になりそうね。・・・・うふふ、それで? キース? あなたは何回くらい私たちに奉仕させようと考えているの?」
僕は苦笑いしながら答えた。 「あんまり良くなくて、1回だけで、もう2度とごめんだとなるかもしれない。そんなことは分からない」
シンディが部屋に入ってくると、ジョイスは立ち上がった。
「シンディ? あなたとお母さんの2人に、ひとつ言っておきたいことがあるわ。今度の水曜日に私の離婚が確定したら、私はキースのところに引っ越すつもり。キースが出した条件に同意したし、無条件で従うつもり。だから、私にその条件を破るように頼んだりしないでね・・・」
「・・・お母さん? 私は言ったはずよ。私は、お母さんとテッドの間に起きてることを邪魔しないと。私はテッドを愛していたわけだし、自分ではテッドの性欲を完全に満たし続けることはできないと分かっていたとも言ったわよね。テッドがむしろ見ず知らずの女のところに行って、心配させられるよりも、むしろ相手がお母さんなら、その方がましとも言ったわ・・・」
「テッドがシンディとセックスした次の日の朝、私、お母さんとシンディに言ったわよね。あなたたちのキースに対する振る舞いを見て、言ったはず。あなたたち危ない火遊びをしてるわよ、って。何か妙な流れが起きているし、あなたたちも気をつけないと、とんでもないしっぺ返しに合うわよって。あなたたちは、私が状況をすべて読み違えていると答えたわ。キースは所詮、父親と同じ、弱虫のウインプなんだから、言われたことしかしない人間だからって・・・」
「その時も、私は警告したわ。まあ、私自身もテッドの性欲には悩まされていたから、多少はお母さんがちょっと楽しんでくれてもよかった。もし、お母さんがテッドとセックスするだけで満足していたなら・・・それに、シンディ? もしあなたがテッドに愛していると言い続けていた、その半分でもキースのことをちゃんと愛し続けていたなら、キースも、あの状態で満足し続けられたはずなのよ。ほんと、あの朝、キースがあなたたち2人に会いに来た朝に、私もその場にいたらと思うわよ。そうしたら、私は、キースに、自分の妻も母親も、自分より他の人を求め、愛しているなんて気持ちのまま家を出ていかせたりはしなかったと思うわ」
母とシンディはジョイスの顔を見つめていた。母が言った。
「私は、キースよりテッドを愛しているなんて言ったことがないわよ。それにシンディもそんなこと言うのを聞いたことがないわ」
ジョイスが応えた。「ほらね。だからあなたたち2人とも、バカだと言うのよ。何もお母さんがそう言ったなんて言わなかったわよ。こんなことになってしまったすべての理由は、あなたたちがキースにそういう感情を抱かせてしまったということ。あなたたちは、あまりにバカなため、自分でそうしているということすら知らなかったということ。あなたたち2人がどう感じてるくらい分かるわ。2人ともテッドを愛していないのは分かっている。テッドは、セックス相手として気持ちいい大きなペニスを持っているという、それだけなのよね・・・・」
「・・・だけど、あなたたちが間違ったのは、やろうと思えば、テッドとセックスを続けながらも、同時にキースに愛情を失っていないことを教えられたのに、そうしなかったということなのよ。キースはテッドなんかより100倍は賢いわ。キースになら、あなたたちがテッドからもらっているのをすべて分け与えるよう、ちゃんと教えこませることができたはずと思うわ。そうすれば、あなたたち、キースとテッドの両方から、望むものをしてもらえたのにね。同じことをお父さんにもしてあげたら、もしかして、3人から望むことをしてもらえたかもしれないのよ。だけど、あなたたちはダメだった。あなたたちが思ったことは、幸せになるには、大きなチンポさえあれば充分ということ。私ならもっと頭を働かせるわ・・・」
「・・・あなたたち、こんなマヌケじゃなかったら、あなたたちがテッドと毎晩セックスしていた間、私はジョンという男と楽しんでいたことに気づいたかもしれないわね。ジョンのことはキースも知っているわ。彼の会社で働いていた人だから。ジョンのペニスも見たことがあるし、彼とはいろんなことをしてきたわ。ペニスの大きさだけが価値を持つなら、確かにジョンはテッドに敵わないのは確か。でもね、テクニックのことを考慮に入れると、ジョンの圧勝よ。ジョンとモーテルでひとときを過ごした後とか、すでにモーテルを出る時に、次に会えるときが待ち遠しくてたまらなくなることが何度もあったわ。ああ、私はテッドなんかのものじゃない。私はジョンの可愛い女の子。ジョンのものなの、ってそういう気持ちになれるの。ま、今はあなたたちも理解できたでしょう。今日、水曜日の時点であなたたちは私から何ももらうことはないし、キースが認めてくれたら、私たちは明日の朝にはキースの邸宅にいて、彼が起きる時に朝食を作ってあげていることでしょう」
僕は姉を抱き、感謝のキスをして、いくらかお金を手渡した。
「もう、そのくらいでいいだろう、ジョイス。このお金で赤ちゃんのための食べ物を買ってあげるといいよ。それから移動にはバスじゃなくてタクシーを使うといい」
玄関へ向かいながら、振り返って母とシンディに呼びかけた。
「娼婦ども、ついて来な。やりたいこと、見てみたいことがいくつかあるんだ」
2人とも、頭をうなだれながら僕のあとについてきて、車に乗り込んだ。