2ntブログ



便利屋 (3) [コロナ禍ストーリー] 


次の日になり、ランチを食べに食堂に行った。かなり良さそうなランチだった。スタッフの数を減らすために高校のカフェテリアのスタイルを取っていたが、それでも調理スタッフは大変そう。たかがハンバーガーと言われそうだが、ここのベーコン・スイスチーズ・マッシュルームのハンバーガーは絶品だ。付け合わせのおかずを全部トレーに乗っけて振り返ったら、俺の真ん前に、誰がいたかというと、あのヘレンだ。嬉しそうな笑顔を浮かべながらスペルマをゴクリと飲み込んでた、あのヘレン。

「ハーイ、ご機嫌いかが?」

「え、ええ。元気です。あなたは?」

「良いわよ。おかげで、もう暑すぎる感じはしないわ」

「どうかなあ。っていうか、また熱くなるかも」

しまった、俺は何を言ってるんだ。頭を使ってから言うんだ。集中しろ。ヘレンは不思議そうな笑みを浮かべただけだった。彼女が裏の意味を取ってないのを願うだけだ。くそっ、くそっ、くそっ。今は自分の下の棍棒をひけらかすのに良い時じゃないんだぞ! 多分、ヘレンは俺のそっちの変化には気づかないだろう。そうだよ、トレーを持ってるから下は見えないはず。この小さな采配をしてくれたことで神に感謝だな。俺が神に感謝するのは2回だけだ。セックスできたときと、恥ずかしい局面から救われた時だけ。

「そうね。また熱くなったら、あなたを呼び出してもいい?」 

そのセクシーな声は前にも聞いているわけだけど、この時の声は純粋にセックスを求めてるような甘い声に聞こえた。

「私の番号はご存じですよね?」

「ええ、知ってるわ」 とヘレンはまた笑顔を見せた後、顔の向きを変え、テーブルへと歩き始めた。彼女の履いてるパンツは、ぴちぴちでまるで素肌の脚にじかに絵を描いたのかと見間違える。それに、あの歩き方。あんなセクシーな歩き方は見たことがない。

トレーを持ちテーブルへと歩きながら、視線を感じて仕方なかった。その女は俺の右側を歩いてて、その目が俺を追っているのだった。俺というか、俺の体の一部分を見てる。その後、彼女は視線をあげて俺の目をまっすぐに見てにっこり笑い、舌なめずりをした。いや、多分、舌なめずりは俺の気のせいだと思うのだけど。ひょっとして、この女がジャニスか? そう想像してしまい、どうしようもなかった。

実際、さっきは勃起を棍棒と言ったけど、今の勃起は鋼鉄と言える。このベーコン・スイスチーズ・マッシュルームのハンバーガーは俺が知ってるうちでもベストのハンバーガーだが、今はそんなことを言ってられない。頭の中はひとつのことでいっぱいだった。そいつを制御できるまでは、テーブルから立つわけにはいかない。

そのうち大丈夫になる。ご婦人たちはすぐに食事を終えて部屋に戻るだろう。そしたら、恥ずかしい目に合わずに立ち上がることができるんだ。だからそれまで待て。そう言い聞かせて自分を落ち着かせた。だが、ちょうどその時、俺の真ん前の席にミス214が座ったのだった。

「こんにちは。あたしはレスリー。まだお互いに自己紹介してなかったわよね」

「こんにちは、レスリー。俺はダーク」

「昨夜のことについて謝りたかったの。あたしの態度、ちょっと無礼だったかもって」

「いいえ、別にいいんですよ。電球が点いたり消えたりするのは時々あることだから」

「あなた、ジョージの部屋にいるって聞いたけど?」

「そうです」

「彼の持ち物をどうしたのかなって思ってて……」

「全部、元のままだと思いますよ」

「あら、まあ……」

レスリーはポーカーをすべきじゃないな。このご婦人もジョージのセフレに違いない。ただ、俺はまだ彼女のパフォーマンスは見てないが。レスリーは暗い顔になった。そのわけは分かる。どうやったら、この人を安心させられるかな?

「俺、彼の音楽を聴いてるんですよ。ジョージは本当に良い趣味をしてたなあって」

「そうよね。ジョージは何についても良い趣味をしてた」

「でも、その他のモノを見る時間はあまりなくって。俺たち若い世代のことは知ってるでしょう? 俺も、ネットばっかりしてるから……」

レスリーの顔がぱっと明るくなった。

「ジョンが戻ってきたら、ジョージの持ち物を運び出すのを手伝ってもらおうと思ってるんです。彼のパソコンとかいろいろ……」

「ええ、そう、きっとそうよね! ジョンならきっと手際よく手伝ってくれるわ」 彼女は、後ろめたい人がそうするように、堰を切って叫んだ。さっきも言ったが、レスリー、あんたはポーカーをしない方がいいよ。まあ、ストリップポーカー(参考)なら別だけど。あっ、ヤバい。ストリップポーカーを思ったら、彼女が素っ裸になってるのを想像してしまった。俺って、いつの間に熟女へのフェチを持ってしまったんだ? またも、立ち上がれなくなってしまったじゃないか。

「繰り返しになるけど、電球の件、ありがとう。じゃあね」

「いつでもどうぞ、レスリー」

部屋に戻って調べたがレスリーのファイルはなかった。動画のメインのフォルダーには20本以上ファイルがある。たいてい、その人物の名前がついている。いつか時間があったら、ファイル名とジョンに定期的に呼び出しをかける人の名前を相互参照できるようにするつもりだが、今は、レスリーがどうしてあんなに心配そうにしていたのか、その理由を知りたい。


[2020/06/05] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する