「隔離への順応」
「あら、まあ! すごく可愛い! あたし、あなたなら、目を見張る姿になるって分かっていたの! さあ、言って、言って……あたしの言うとおりだったでしょ? 違う?」
「ボクは依然として完全にこれに乗ってるわけじゃないんだけど、ヘザー」
「ヘザー様でしょ? 忘れないでね、あなたは今はあたしのメイドなの」
「でも……」
「あなたも同意したでしょ。だからこれから何とかして逃れようなんて考えないこと」
「仕事に戻るまでは家の掃除を担当することは同意したよ。でも、こんな……こんなコスチュームには同意しなかった。スウェットパンツとかじゃダメなの? ていうか、この服だとボクはまるで……まるで、おっぱいがあるように見えてしまう」
「それを買ったのあなたでしょ?」
「キミに買ったんだよ! キミがつけたら……セクシーになるかと思って……」
「ええ、セクシーだわ。でもね、あなた。ちゃんと現実を見て! それを着けたあなたは、あたしなんかより何倍もセクシーに見えているの。床屋が軒並み休業しててホントありがたいわ。あなたのそういうヘアスタイル、あたし好きだもの。加えて、あなたはお化粧も本当に上手だし」
「本気でボクにこういう格好をさせ続けるつもり?」
「もちろん。どうして?」
「だ、だって、ボクは男だから。男性なんだから」
「それを着てる間は違うわ。全然違うもん。だからあなたの名前を考えたの」
「ボクの名前の何がおかしいの?」
「だって、その姿を見てると、フランクって呼ぶの変に感じるのよ。そうじゃない? ぜったい変だわ。前からフランチェスカって名前がずっとフィットしてると思ってたの」
「フランチェスカ? まさか本気で……」
「もうお話は充分よね、フランチェスカ。あたし、仕事に行かなくちゃ。それと、おうちは、ひとりでにきれいになるものじゃないわよね? あたしが戻るまでにきれいになってるといいわよね? シミひとつない状態ってことだけど。分かった?」
「うん」
「うん、って何が?」
「はい、ヘザー様」
「いい娘ね」
つづく