「隔離への順応」(7)
「ダメ。本当に。もしヘザーに見つかったら……」
「ヘザーはいないよ」とポールはあたしにウイスキーが入ったタンブラーを差し出した。「知らないことなら、傷つくこともない」
あたしはウイスキーを受け取った。もし妻が、いや、正式に離婚して3週間近くになるから、元妻だけど、もし彼女があたしが彼女の高価なお酒を飲んでいたと知ったら、しこたま叩かれるだろう。実際、あたしは、すでに一度、彼女の膝にうつぶせにさせられ、お尻を叩かれるという屈辱を味わっていた。しかも、彼女のお友達が見ている前で。あの経験は二度と繰り返したくない」
茶色の液体をひとくち啜った。喉が焼ける感じに、思わずハアーっと息を吐いた。あたしは、笑顔であたしを見るポールにちらりと視線を向け、「ごめんなさい。あまりお酒は飲まないので」と言った。
「いいんだよ。君は今みたいに顔をくしゃくしゃにすると、本当にキュートに見える」
「ポール……あたしたち……こういうことは……」
「不適切だなんて言わないように」とポールは片手をあたしの膝に乗せた。このひと月かふた月ほど、彼はあらゆる機会をとらえてはあたしの体に触れてきてるように思える。そして、気づいて恐ろしく思ったことに、あたしはそれを嬉しく感じているのだった。もっと言えば、彼とふたりだけになるときが来るのを待ち望んでいる自分がいた。表面的には何も起きていない。でも、そうだからと言って、あたしが彼とのことを思い続けていないことにはならない。実際、いつも彼をのことを意識し続けていた。
「不適切だわ」 やっとの思いで口に出した。急に喉がカラカラになった。あたしの細い指が彼の指に触れた。ただ一瞬、触れただけだったけれど、その瞬間、体に電流が走った。「分かってるの……あなたがあたしのことを見てたこと……いつもずっと。あなたが何を考えているのか分かってるわ」
「本当に?」
「あ、あなたは、あたしとしたがってるんでしょう?」 小さくつぶやいた。「彼女としてることみたいなことを」
「それは否定しないよ」
心臓が喉から飛び出そうになったけれど、何とか堪えた。「じゃあ、どうしたらいいの?」
つづく
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