「隔離への順応」(10)
「大丈夫?」とポールが訊いた。彼の固いペニスが半分まであたしの中に入っている。彼は何時間とも感じられるほどの長時間、この行為に向けてあたしの準備を整えるために使ってくれていた。舐めてくれたし、指で愛撫してくれたし、何リットルにもなるかというほどたくさん潤滑剤を使ってくれていた。でも依然として、彼のソレはあたしを真っ二つに引き裂いているように感じられた。「いつでもやめていいんだよ?」
「イヤ、やめないで」とあたしは息を絶え絶えにしながら答えた。
なぜ自分が彼に続けて欲しがったのか、今でも分からない。気持ち良くはなかった。少なくとも肉体的な快感はなかった。ではあったけれど、これは、あたしにとって登り切ってしまおうと心に決めた山だった。それに、アナルセックスで快感を得てるという人が何百万人もいるのを知っている。その全員が嘘をついてるはずはないと思った。だから、あたしはポールに続けるよう繰り返し求めた。
あの時、自分は、これをすることと、女になることとを結びつけたのだろうか? それも今は分からない。多分、あたしはこれを通過儀礼と思っていたかもしれない。あるいは、単に、他の普通の女性が愛する男性を喜ばすのと同じやり方で、彼を喜ばせてあげたいと思っていただけかもしれない。あたしには分からない。ともかく、苦痛が耐えきれなくなりそうになるのにつれて、あたしは、こういうことを考えようとするのを止めた。
主観的には永遠と思われる時間の末、ようやく彼は完全にあたしの中に入った。体の一部が埋められただけとは理解しつつも、体全体がいっぱいにされ、今にも全身が破裂しそうな感じ。もし後ろに手を回して触ったら血がついているはずだと思った。知らないうちに両頬を涙が伝っていた。でも、それでもなお、あたしはポールに続けてほしかった。
そして、実際、あたしが苦痛に顔をゆがめ頬を濡らしているにもかかわらず、ポールはやめなかった。彼ほど愛情深く、思いやりがある人間であっても、やはり男なのである。それに、彼自身は痛みを感じていないのであるから。
最後まで貫通した後、今度は引き抜きの動きになった。彼のペニスがあたしの内側を滑るように動くのを感じる。苦痛が和らいでいるのか? それとも、それはあたしの想像にすぎないのだろうか? はっきりしなかった。彼は、抜け落ちそうになるまで引き抜いた後、再び中へ戻ってきた。二回目の挿入は、最初の時より少し速かったけど、不思議と最初の時ほど痛みはなかった。また出ていっては入ってくる。6回か7回出し入れがなされた頃には、痛みは薄らいで意識の背後に消え、代わりに満足感と肉体的快感が混じった奇妙な感覚が前面に出てきていた。
彼のアレを受け入れることができたのだという満足感。彼を喜ばせているという満足感。自分は女になっている!
「もっと強く」と囁いた。ほとんど聞こえないような声で。ポールはそれに応じて、出し入れのペースを上げてきた。それを受けて、あたしはもっと速く、もっと強くと懇願した。苦痛は消えていない。完全には消えていない。というより、より大きな快感によって苦痛が打ち消されているだけと言えた。押し入れられるたびに、その快感が大きくなっていくのを感じた。どんどん膨らんでいく。つい何分か前は苦痛で体が破裂しそうだったのに、今は快感で体が破裂しそう。
そして、突然、溜まりにたまった快感の塊が破裂し、あたしのカラダ全体を包んだ。
これまでの人生で落胆しかもたらしてくれなかった一物であるあたしの萎えたペニスがが、ピュッピュッと水っぽい精液を放った。体全体がガクガク痙攣した。両脚がぶるぶる震えた。つま先がキューっと内側に反った。枕に顔を埋めながら言葉にならない叫び声をあげていた。もっと求めてお尻を後ろに突き上げながら、震える両手でシーツを握りしめた。オーガズムに達している。しかも経験したことがない形で。エクスタシーの波が次々に襲ってくる。そして、その間も、ポールはずっと突き続けてくれている。
自分は死にかかっているのだと思った。あるいは、長い人生で初めて生きているのだと。どっちなのか分からないけれど、この激しい経験の本質を説明することはできないものなのだと思う。ともかく、あたしにとって初めての女性としてのオーガズムは、人生を変える経験だったと言えば充分だと思う。
永遠と思われる時間が過ぎ、ようやくあたしの発作が収まり始めた頃、ポールがあたしの中に射精した。彼の全身の筋肉がギューッと収縮するのに合わせて、彼は切羽詰まった感じであたしの腰をつかんだ。そして次の瞬間、あたしの奥底に来ていた彼のペニスがそれまでになく膨張し、脈動を始め、それと同時に子種液であたしの中を溢れさせた。これは先とは違った種類のエクスタシーをあたしにもたらした。純粋に心理的な満足感。でも、それは肉体的なオーガズムとほぼ同じくらいインパクトがある感覚だった。
ハアハアと苦しい喘ぎで呼吸しつつ、あたしは、ベッドにがっくりと突っ伏した。彼があたしの中から抜けてるのをぼんやりと感じた。あそこがぱっくりと口を開け、空っぽになっているような気がした。それは本来の姿ではなく、中を埋められ満たされている状態が本当の姿のような感覚がした。だから、すぐにまた埋めてほしいと思った。そうしてくれないと困ると。何分間か、それしか考えていなかったと思う。でも、ゆっくりとではあったけれども、その気持ちは薄らいでいき、やがて、満足感だけが後に残った。
ポールがあたしの隣に横たわった。うつぶせに横になってるあたしの腰のくびれに腕をぐったりと回して垂らしていた。ふたりとも何も話さなかった。どちらも、そうする必要を感じなかったから。ふたりとも、カラダが話さなければならないことのすべてを語っていたので、後は、黙って横になっているだけで満足だったのだと思う。
つづく
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