朝になり、着替えをしてると廊下がきしむ音がした。ドアを少し開けると、あのふたりがリビングの方にこっそりと歩いているところだった。彼女たち出ていくつもりなのかと思い、私はドアを開けた。ふたりは動きを止めた。
「君たち朝食を食べたくなった?」
ふたりは顔を見合わせた。「あたしたち出て行った方がいいかなと思って。あたしたちを泊めておくとか、そういうつもりじゃないんでしょ?」とマギーが言った。
「つまり、君たちは、私が君たちを強制的にここに留めるつもりかと?」
ふたりはまた顔を見合わせ、その後、私に顔を向け、頷いた。
「いや、私は何も強制しないよ。人に何かを強制するのは私のルールに反する。でも、私と一緒に朝食を食べてくれたら良いなと思っているけど?」
ふたりはまたもや顔を見合わせた。「一緒に食べたら、あたしたちを帰らせてくれる?」とストークリイが訊いた。
「そうしたいなら。本当のところは、君たちが今日一日、私と一緒にいたいと思ってくれたらいいなあと思っているんだ。そうじゃないなら、全然かまわないよ。でも、今日は誰かと会う約束でもあるのかな?」
「ええ、うちの株主との面会があるから」とマギーは笑った。まるでクリスマスツリーのように明るい笑顔だった。「で、朝食は何?(What you going to feed us?)」
「まず、君は今の文でbe動詞を抜かしたね。正しくは、What are you going to feed us?だね」
「あんた英語の先生かなんか?」
「実を言えば、その通り。私は大学で英文学を教えている」
「はいはい、かっこいいこと! あたしたちは学校なんか行かないもん。忙しすぎて」
「ともあれ、朝食は食べるんだよね? ワッフルとベーコンを考えているけど、君たちは好きかな?」
ふたりとも好きなようだった。そんなわけで3人でキッチンに行き、私がバターを混ぜている間、ふたりはワッフルアイロンを用意した。私が800グラム分のベーコンを炒めてる間、ふたりはワッフルを焼いた。私はちょっとシロップにうるさい。コーヒーにもうるさい。ベーコン炒めの続きはマギーに任せ、私はコーヒー豆を挽き、パーコレータを設置した。3人の共同作業ですべて完了し、メイプルシロップつきのワッフルが完成した。ふたりとも、コーヒーに入れるクリームはないのかと訊いて私をがっかりさせた。コーヒーにクリームを入れるような野蛮人とブリアナのためにいくらかクリームは用意していたので、それを与えた。ふたりはバニラ・ヘーゼルナッツも好きだった。多量のベーコンだったが、みんなですべて平らげたし、3人それぞれワッフルを3枚ずつ食べた。
「私と一緒にいるといい。そうしたら、1週間以内に君たちをカエルみたいに太らせることができるよ」
それを聞いてふたりは声を出して笑った。その笑い声、これまで聞いた音の中で一番素晴らしい音だった。ふたりは飢えた子牛のように牛乳を飲んだ。家の食料貯蔵庫はちょっと拡張しなければならないだろう。