「すごく大きいね」ストークリイは笑いながら、グラニーの頭をトントンと叩いた。「何て種類の犬? ちょっとトラみたいに縞模様がある」
「ブル・マスティフという種類。こういう柄をしてるので縞柄種と呼ばれているんだ」
「まるであたしたちの顔を食いちぎれそうな感じだよ?」とマギーが言った。
「ああ、やろうと思えばできるよ。でも、グラニーは大丈夫。彼は僕の友達にはフレンドリーなんだ。君たちが家のソファに座って、私と仲良くしてるのを見て、君たちを好きになったんだろうな。もし君たちが僕に好戦的な態度を示していたら、彼も警戒して、とても攻撃的になっていたかもしれないね。もう彼は君たちのことが分かったから、今度は誰にも君たちに好戦的な態度を取らせないようにすると思うよ。もし僕が君たちを怒鳴ったら、それも気に食わないと思うんじゃないかな。彼は、愛する人を守る気持ちがとても強いんだ」
ストークリイは跳ねるようにしてソファから降り、グラニーの上に覆いかぶさって首のところに腕を回して抱きついた。グラニーも彼女の腕をぺろぺろと舐めた。「グラニー、大好き! しわくちゃ顔でキュート! グラニーはガレージに住んでるの?」
「いや、家の中だよ。昨日はちょっと体の具合が悪かったので、家じゅうに吐かれると困るから、ガレージに出していたんだ」
「どうして具合が悪くなったの?」
「グラニーは、よく、食べちゃいけない物を食べてしまうんだよ。棒をしゃぶったり、虫を食べたり、何とは言わないけど、死んだものを見つけては食べたりとかね。でも、今日は大丈夫みたいだ」
「キモっ!」とマギーが叫んだ。「あたし、さっき、顔を舐められたんだった!」
「ああ、彼は可愛いけど、ちょっと汚くなる時もあるんだ。でも、グラニーは僕の友だちだ。だから僕は我慢してる。彼は、君たちが認めるなら、君たちの友だちにもなるよ。そろそろ、みんなで彼の散歩に連れて行った方が良いかな」
グラニーのリードを持ってくると、マギーが彼をリードしたがった。たいてい、グラニーはリードを持つ人を引っ張っていく。だから、マギーは彼に引っ張られて、僕とストークリイの2メートルくらい前を歩いていた。ストークリイは歩きながら、小さな手で僕の手を握った。彼女を見降ろすと、彼女は笑顔で僕を見上げた。ああ、何て綺麗な子なんだろう!
「こうしても構わない?」
「もちろんだよ。可愛い女の子と手をつなぐのは大好きだから」
ストークリイはちょっと顔を染めたが、僕の手を離すことはなかった。僕たちは3キロほど歩き、家に戻ったときには、グラニーはハアハアと息を荒げ、涎れを垂らしていた。この犬は、この日のように寒い日でも、こうなる。
その日の午後、僕たちは、コーヒーを飲みながらおしゃべりをした。そして、ようやく僕は、ふたりに助けてあげてもよいだろうかと訊いた。
「どういうことをしてくれるの?」とマギーが訊いた。
「正直分からない。ブリアナに話しても良いかなと思う。専門外とは言え、彼女は法律家だ。多分、何か方法を考えてくれるかもしれない」
「その人って、例のビッチ?」とマギーが訊いた。
「マギー、ブリアナはビッチじゃないよ。そう言うふうに呼ぶのはやめてくれ。僕を信頼してくれるかな?」
ふたりは顔を見合わせ、その後、僕の方を向いた。「ええ、まあね」とストークリイが言った。「あんたはあたしたちにとても優しくしてくれているよ」
「じゃあ、彼女に電話して、こっちに来れるか訊いてみよう」と僕は言った。「君たちも彼女が気に入ると思う。彼女にチャンスを与えてあげてくれ」
ブリアナは忙しかったが、夕食にはこっちに来れると言った。