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浮浪者 (6) 


ブリアナは背が高い、ゴージャスと言われる赤毛の美人だ。匂い立つような色気を放っているのに、自分ではまったく分かっていない。彼女が家に入ってきた時、マギーとストークリイは、彼女のオーラに唖然としていた。ブリアナは僕に全身が搾られるようなキスをし、その後、ふたりの女の子たちをハグした。

「あたしの替わりを入れたってわけね」と彼女は僕にウインクした。

「いや違うよ、ブリイ。君の代わりになる人なんかいないよ。知ってるくせに」と、僕は冗談っぽく言った。

でも、ブリイの代わりがいないのは本当だ。マギーたちには、僕がブリイと友だちだと言ったし、その通りだ。僕とブリイは相互に利益が得られる友人関係にある。離婚後も素晴らしいセックスを楽しんでるし、時には週に一回かそれ以上している。彼女が僕のところに来て1週間くらい泊まっていくときもある。そういう時は、僕たちはサカリのついた動物のようにセックスしまくる。離婚したのは、単に、彼女の生活には夫のための時間が作れないということだけだったし、これからもそれは続くと思う。ブリイはブリイのやり方で僕を愛してくれているし、僕も僕なりに彼女を愛している。単に、僕たちふたりは夫婦関係でいることができないということだけ。僕たちはセックスパートナーとしてなら完璧にうまく付き合えるけど、夫婦でいた時は犬と猫のようにケンカばかりしていた。

「で、あなたの新しい彼女のお名前は?」 とブリイはふたりに微笑みかけた。あの笑顔を見てマギーもストークリイもまぶしく思ったのではないだろうか。

「あたしはマギー。それにこの子はストークリイ」

「会えてうれしいわ。あなたたち、この男が危険なヤツだというのは知ってるわよね?」

「あたしたちには、そうじゃないよ」とストークリイが言った。「敵としている人にはそうなのかもしれないと思うけど。棍棒を持ってるし、すごく大きな犬も飼ってるから」

ブリイはグランビルのところに忍び足で近寄った。するとグラニーは不審げに唸り声をあげた。

「ねえ、大男さん?」と彼女はひざまずいてグラニーにハグをした。「あたしに会えなくて寂しかった?」 グラニーは目を剥いては見せたが、頭をもたげることすらしなかった。

「で、どういうこと、マック? あたしと何を離したいのかしら。別にディナーに招待してくれたことは気にしてないけど。……おふたりさん、この男、料理の腕はたいしたもんなのよ。やる気を出させられればの話しだけど」

「マックは、ラムチョップ(参考)を作ったと思う」とマギーが答えた。「それ、あたしたち、食べたことないんだ」

「そう。だったら、ごちそうにありつけるわよ。でも、何があったの?」とブリイは再び訊いた。

4人でディナーを楽しみ、僕は説明をした。

「ブリイ、君の助けがほしい。僕は法的なことについては何も知らないからね。この子たちは孤児なんだ。まあ、父親は生きてるかもしれないが、どこにいるか誰も知らない。父親は彼女たちを捨ててどこかに行ってしまったし、母親は殺されてしまった。その後、里親施設にいたが、その施設の誰かバカ者がふたりに手を出し始めたため、ふたりは施設を逃げ、路上生活をしていたんだ。ふたりは、食べ物を求めて、僕の家のゴミ缶を漁っていてね、そこを捕まえたわけ。そこで相談なんだが、何か、この子たちを路上生活に戻さなくても済む方法を探しているところなんだ」

ブリイはしばらく黙ったまま僕を見つめていた。「あなた、この子たちが欲しいのね? 驚いたわ、マック! あなたはずっと子供を欲しがっていたものね。でも、あたしが断っていたので、この子たちが欲しいと。そうでしょ?」

僕は顔を赤らめた。「ああ。そう言ってもいい。そうするためには、どうすればいいと思う、ブリイ?」

「無理だと思う」と彼女は言った。「どの家庭裁判所も、あなたにこの幼い女の子たちを預けるのを許可しないでしょうね。あなたは独身の男性。そこに幼い女の子ふたりを預けるなんて、悲惨な結末を準備するようなもの。絶対に許可されない」

僕はマギーたちに目をやった。ふたりとも目を皿のようにして僕を見つめていた。「ん? どうした?」と僕は訊いた。

ふたりは互いに見合い、突然泣き出した。一緒に僕のところに駆け寄り、しがみついてきた。「あたしたちをもらいたいって?」とストークリイがすすり泣きながら言った。「信じられない。あたしたち、養ってくれる人なんか誰も……誰も……」 ストークリイは先を続けることができなかった。

僕はふたりをしっかりと抱きしめた。「ああ、そうだよ。それを考えていたんだ。君たちは、見守ってくれる人が必要だ。僕も見守ってくれる人が必要なんだ。だから、君たちと僕とで互いに互いを見守ることができるんじゃないかと思ったんだよ。それにグラニーも僕たち3人を見守ってくれるだろうし」

ふたりの小さな体が震えていた。ぐいぐいと、抱き着く力が強くなってくる。

僕はどうしてよいか分からず、助けを求めようとブリイを見た。ブリイの頬には涙が流れていた。彼女は子供たちから僕へ視線を移した。

「もう、マックったら。見てよ、あたしに何てことをしてくれたの! いつも、あなたのことは分かってると思ってる時に限って、こうやってあたしを驚かせるんだから。あたしはどうしたらいいのよ?」

彼女は変な表情をしていた。まるで初めて僕に会ったような顔だった。

「にさん日、考えさせてくれる? 娘さんたち? あなたたちはあたしと一緒に来るの。ここでマックと一緒にいることはできないわ。それが明るみに出ちゃうと、すべてが台無しになってしまうかもしれないから。マック? あたし、この子たちと一緒にグラニーも連れて行くわよ。あたしは一日中家にいることはできないけど、グラニーがいればふたりの安全を見てくれるだろうから」

ブリイはまるで竜巻のように家の中を忙しく歩き回り、マギーとストークリイ、そしてグラニーを家から連れ出し、彼女のメルセデスへと押し込んだ。「後で電話するわ」

実際、ブリイはそれからの2週間の間に、3回、それぞれ30秒ほど電話をしてきた。その期間、ふたりの娘たちの姿は影も形も見なかった。そして金曜日の朝、ブリイが電話をしてきて、アルフォンソの店で夕食がてら僕に会えないかと言ってきた。この店はポンティアック(デトロイト圏内の小都市)にあるイタリア料理の良い店で、僕たちは何度も行っている。

僕が店に入ったときには、彼女はすでに来ていて、カウンターのところに座っていた。彼女の周りには男たちが群がっていた。ブリイは僕を見かけると飛び上がるようにして立ち、涎れを垂らす周りの男たちを置き去りにした。彼女と僕は空いているブースに移動した。彼女は僕を押すようにしてブース内に座らせ、自分は僕の隣に座った。普通はブリイは僕の対面席に座りたがるので、隣に座ったということは何か特別なことがあるのだろうなと思った。注文を済ませるまでの間、彼女はほとんど口をきかなかった。


[2020/07/28] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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