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Wイェックス:妊娠 (7) 


「どのくらいかかるのかなあ。僕が女性に……」

途中まで言いかけてやめた。体毛がみるみる肌の中に吸い込まれていくのを見たし、感じたから。注射したへその下の地点を中点として、緩やかな波となって同心円状に広がっていく。1分くらいした後、頭に変な感じがした。髪の毛が伸び始めている。

「血清が体毛をむしゃむしゃ食べてるの。その代わりに頭部の髪の毛を伸ばしてくれる。すべて順調に進んでいるわ」

カレンに説得されてストリッパーの仕事を辞めてから、僕は体の毛を剃っていなかった。8年位前だ。体毛の量がこんなにあったとは知らなかった。みるみる髪の毛が伸びて、濃いブロンドの毛の塊が顔に覆いかぶさり、視界をふさぎはじめた。手で払いのけないと、前が見えない。

「次は柔らかい組織の形成が始まるわ。これはちょっと気持ち悪いかも」

胸が徐々に膨らみ、ウエストが細くなっていくのが見えた。体の筋肉がしぼんでいく。その分、乳房の形成に供給されているのだろう。股間がぐいぐいせり上がってきた。お尻や太ももが膨らんできたせいだろう。

「女性は男性より体内脂肪の割合が高いの。あなたの筋肉細胞の大半が『あなたたち、本当は脂肪細胞なのよ』と言われて説得されているところね。まだ、すべて順調よ」

起きていることをカレンに説明してもらって、ありがたかった。彼女はWイェックスの注入を受ける患者たちに同じことを言ってるのだろうけど。でも、まるで自分が特別に賢い妻に見守ってもらっているようなふりをすることができて、ありがたかった。変化が股間部分と顔に移り始めるのを感じ、僕は固く目を閉じた。

「もうすぐ終わりよ。最後は骨。これはすごく気持ち悪いかも。大丈夫?」

確かに。体の中、骨格が変化していくのを感じる。肋骨と肩がすぼまっていくのを感じた。同時に腰の周辺が広がっていくのも感じる。それに、背が縮んでるのも感じた。診察台に乗ってるおかげか、自分がじわじわと縮んでいくのが分かる。

変化がゆっくりとなり、やがて止まったように感じたが、僕は目を閉じたままでいた。乳房がずしりと胸を圧迫しているのを感じるし、臀部が膨らんだせいと思うけれど、尻の下に新しくクッションを入れたような感じがする。

「終わったようね、タイ。新しい自分の姿を見たい?」

不安感を払しょくしようと、深く息を吸ってゆっくりと吐き出した。体を起こしたけれど、大変な苦労だった。僕はダンスのために勤勉に運動を行っていたが、こんなに体に力が出ない状態は記憶にない。

ようやく目を開け、下を見た。乳房があった。驚くほど大きい!

ぎこちない動きだったが、やっと立ち上がって直立した。その時に初めて、妻と目を合わせようと顔を上げた。顔にかかる髪を払って、彼女はどう思ってるのか、妻の目を探った。結婚指輪が指から抜けそうになるのを感じた。指がはるかに細くなっている。落ちないようにこぶしを握らなければならなかった。

カレンは笑顔で僕を見ていた。壁の鏡を見てみてはと合図を送っている。僕は体をこわばらせながら、壁の方に移動し、鏡に映る姿を見た。

正確には太っているとは言えないけれど、重量感があるのは確かだ。どこを見ても……ずっしりしてる。乳房はカレンのよりも大きかったし、ヒップも大きかった。太ももも太くなっていたが、腕はどちらかと言うと細くなっている。顔は女性的だったが、化粧してないからか、可愛い顔なのかどうか判断は難しい。髪は長く、肩にとどきそうだった。

「どう思う?」と妻が訊いた。

「わ、分からないよ」 口ごもった。新しい声は甲高く、自分の声に驚いた。手を胸に上げ、片方の乳房を持ち上げてみた。「何と言うか……分からないけど。子だくさんのカラダ?」 巨大な乳房と安産型の腰。これを表す、より適切な言葉が思い当たらなかった。

「うふふ。あたしたちの赤ちゃんが十分おっぱいを吸えそうなのは確かね。ちょっと触ってもいい?」 と彼女は僕のバストを指さした。

「あ……ああ、いいよ」

妻は両手で僕の乳房に触れ、持ち上げるようにしてみた後、ぶるんぶるん振り始めた。そうしながら、ずっと12歳くらいの女の子のようにくすくす笑い続けた。

「これってすごいわ。仕事が終わるのが待ちきれない!」

胸をぶるんぶるん振り回される。こんな感覚は初めてだった。僕は彼女に胸をいじられ、遊ばれるままにさせていたが、その後、彼女は僕の後ろに手を回し、彼女のよりずっと大きなお尻の肉を揉み始めた。

「ああ、大丈夫。あなた、あたしがあなたに魅力を感じなくなるんじゃないかって心配していたけど、その心配は不要よ、タイ。ほんとに。女性としての名前については、考えてみた?」

考えていたけど、鏡の中の姿を見ると、「ティナ」とか「テレサ」は似合わないと思っていた。

「似合う名前は何も……。何か考えてた?」

カレンは頭を傾げ、僕の顔を見つめた。手を伸ばして、僕のブロンド髪の毛の房を優しく束ねた。「ちょっとアンバー(琥珀)を思わせるわね。アンバーっていう名は、どんな感じ?」

僕は、もう一度鏡を見るため、彼女の手を優しく払いのけた。カレンはずっと僕を触っていたいらしく、彼女の手から逃れるのが難しくなっていた。ああ、確かにアンバーはいいかもしれない。

「確かに。いい感じ」


[2020/08/02] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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