「あなたについて、一番腹が立つのは、細かいことを求めすぎる点」と彼女は言った。「あたしがしてることすべてについて、ありえないほど細かいところまで知りたがる。どこに行ったのかとか、誰と一緒だったのかとか、何をしているのかとか、いつ家に帰ってくるのかとか。一種、嫉妬深い強迫性障害みたいになるんだもの。あたしをコントロールするのをやめて、あたしのことをほったらかしにしておこうとさえしてくれたら、今もあなたと夫婦でいたと思うわ。ああいうふうに根掘り葉掘りされると、あたし、気が変になってしまうの。今では、あたしが興味を持ってる男性はあなただけというのは、あなたにもはっきり分かっているはず。そうでしょ、マック?」
「ああ、多分。前は、その件で死ぬほど悩んだ。君が他の男を見つけて僕を捨てるんじゃないかと心配していた」
「そんなことは起きないわ。あなたに初めて出会った日から、他の男のことを思ったことは一度もないもの。顧客や同僚とディナーに行くわよ。男性、女性含めてグループで踊りに行くこともあるわ。いろんな人におもてなしをする。だって、それが仕事なんだもの。でも、あなたと出会った瞬間から、他の男も女も誰もあたしに親密に触れた人はいないし、これからも、それは同じ。信じてくれる?」
「ああ、信じるよ。僕の場合も同じだ。ブリイ、僕は君を信頼している。君が僕を傷つけることなどないのは分かっている。ただ、君はとても気ままで自由な人なのだというだけのこと。僕は君と結婚した第1日目と同じくらい今も君のことを愛しているよ。君も同じ感覚でいると思うし、今までの僕たちの関係は居心地よかったと思ってるんだが……なのに?」
「まあ、今のあたしは違うわ。家族を求めてる女の子がふたりいる。あの子たちのこと、あなたと同じくらい愛してるの。仕事より愛してるのは確かだわ。あたしはあの子たちの人生の記憶の中に残りたいけど、それを実現するためには、あたしとあなたとで、協力して事に当たる他ないと思っているの。だから、チャンスをくれない、マック? あたしと結婚してくれない? ふたりでこの家族を一緒に維持していけるように、あたしを愛そうと頑張ってみてくれない? あたし自身は子供を産むことはないと思う。それをするには、あたしはあまりに自信過剰だし、利己的な人間だから。でも、あなたとなら、あの子たちの親になれるはず。結婚して、マック。そうしたら、あなたをこの上なく幸せにするようベストを尽くすから。いいでしょう?」
「どうやら、この件について、ずいぶん考えてきたようだね。なら、僕にも、多少時間をくれてもいいよね?」
カレンは時計に目をやった。「20分あげるわ」
「おいおい、締め切りがあることなのか?」
「ええ。20分後で、あの子たち店の外であたしたちと会うことになってるの。あと10分で、この店の前に来るはず。それから10分間、グラニーの散歩をさせる。その後、車で、あたしたち4人はあなたの家に行く段取り」
僕たちは急いで食事を済ませ、店の外に出た。そこにはリムジンが待っていたが、女の子たちはいなかった。ふたりは犬の散歩に行ったと運転手が言う。彼は「あの犬」のことが気に食わない様子だった。多分、車の内装に涎れを垂らされて嫌だったのだろう。数分待っていたら、向こうからふたりが僕たちのところに駆けてくるのが見えた。