オレンジジュースとマフィンを手に、グラニーに呼び掛けた。
「おいで、グラニー。この破壊現場から一緒に逃げよう」
グラニーは頭を上げ、こちらに目を向け、唸りながら起き上がった。一緒に庭に出ると、グラニーは早速ひと通り庭を駆け回った後、僕の足元に横たわった。僕はと言うと、デッキチェアに座り、太った大きなトカゲのようにごろごろしながら陽の光を浴びていた。一年のこの時期にしては、暖かい日だった。
すると引き戸が開いて、中からストークリイが出てきた。手に牛乳とマフィンを持っている。
「やあ、天使ちゃん」と僕は手を振った。
「おはよう、マック」 ストークリイは戸を閉めた後、ちょっとその場に立っていたけれど、その後、僕が座ってる椅子のところにやってきた。「あたしが座れるところ、ある?」
僕は横にずれたが、彼女は僕の片方の太ももに座り、僕が空けたところに両脚を伸ばした。ストークリイはふうーっと息を吐きながら体を丸くし、マフィンにかじりついた。ストークリイの大きな緑の瞳に見つめられると、魂が射抜かれる気持ちになる。
「マック?……」と彼女は話し出そうとしたが、マフィンのパンくずが僕の腿に散らばった。
「おっと。まずは食べること。次に牛乳を飲んで、飲み下し、それからしゃべること」
彼女はくすくす笑ったが、ちゃんと口の中を空っぽにしてから話し出した。
「マック? あたしたちを養子にもらうと、マックがあたしたちのパパで、ブリイがママになるの?」
「そうなってほしいかい?」
「うん、もちろん。ブリイは一番かっこいいママになると思う! マックはかっこよくないけど、どっちかと言えば……頼れるパパになると思う。あたし、マックのこと大好きだし、世界で最高のパパになると思う」
僕は咽そうになった。「ま、まあ……かっこ悪いというなら、頼れるというのは嬉しいことなんだろうな」
彼女は笑った。「そんなつもりで言ったんじゃないよ。ていうか、ブリイは自然の力で、マックは山みたいな感じ。ブリイは本当に、本当にマックのことを愛しているよ。いつもマックのことを話してる。ブリイとマックとのことを全部話してくれたよ。マックはブリイを愛してる?」
「ああ、愛してるよ。でも、さっき良いこと言ったね? 彼女は自然の力だって。彼女の愛は、嵐や山火事のように愛そうとしてる感じだ」
「でも、山は嵐も山火事も気にしないよ。マギーはブリイに似てるところがあるの。あたしはマックに似てる」とストークリイは僕の胸にすがりついてきた。
「あたしとマックは、こっちが望めば、ブリイやマギーにあたしたちの周りでさせたいようにさせていればいいと思うんだ。あたしたちは、台風の目みたいに静かにしていればいいの」と言って、彼女は顔をあげ、僕を見た。「あたしはマックにパパになってほしいよ。マックみたいな人に出会えるとは思っていなかった。ブリイも同じ……」
彼女は泣きそうになって喉を詰まらせた。「マギーとあたしは、ずっとたったふたりで、怖がってばかりいたの。マックの生活には、あたしたちみたいな女の子が一緒になる空きスペースがある?」
僕は彼女の小さな体を抱き寄せた。「心の中にあるよ、ストークリイ。僕の心の中にちゃんとある。もう何年も前から愛せる人を僕は求めていたんだよ。ストークリイとマギーのような人をね。そういう人はこれまでいなかったと思う。ブリイは子供を持つことに、ひとかけらも興味を示さなかったし。君たちふたりは、ブリイの生活をぐちゃぐちゃにしたんじゃないかな? 僕の生活をぐちゃぐちゃにしてくれたのと同じようにね。ブリイが君たちを見るまなざしを見たよ。まるで、つい2週間前に、やっと目が覚めて、自分は母親であることが好きなんだと発見したような眼差しだった。君たちほど、何かが彼女に影響を与えたところは見たことがないよ」