大きなV型8気筒エンジンが生きかえり轟音を上げた。娘たちはふたりとも興奮でぶるぶる震えていた。僕はドアを閉め、窓をノックし窓を開けさせた。僕は運転席に座るマギーにもう一度キスをした。
「じゃあ、学校で会おう」
マギーはバックで車を玄関前から道路へと出したが、そこで車を止めた。ブリアナと僕は立ったまま、車に乗るふたりを見ていたのだが、急にドアが開き、マギーが飛び出してきて、僕たちのところに飛ぶようにして駆け寄ってきた。両腕を広げて僕たちに抱きつき、何度も何度もキスをしてくれたのだった。
「本当にすごく愛してる」と何度も繰り返して言う。「ありがとう。ふたりは地球で一番のパパとママよ!」 そして再び車へと駆け戻り、そして走り去った。
ブリアナに顔を向けたら、彼女は赤ん坊のように泣いていた。僕自身、何と言ってよいか分からないが、目に涙が溢れていた。「僕たちを見てごらんよ。ふたりとも3歳の子供かなんかにしか見えないな。でも、ブリイ、車のことを思いついたのは素晴らしかったね。君は最高の女性だ」
ふたりでしばらくの間、抱き合った。授業に遅れるかもしれないのは分かっていたけど、構わなかった。
ストークリーが16歳になったとき、新車のチャレンジャー(
参考)を買ってあげた。マギーの時のように感傷的になったりはしなかったが、特別なイベントだったのは変わりない。それぞれ、高校を卒業した時には、ふたりをハワイとベリーズ(
参考)に連れて行った。
ストークリーが大学生生活を始めるために家を離れる日、家に帰ると、ブリアナがソファで泣いていた。僕は彼女の隣に座り、ひと言も語らず、ただ両腕で抱き、慰めた。ブリイは僕の胸に顔を寄せ、静かに泣いていた。しばらくたち、ようやく彼女は顔を上げた。大きな青色の瞳に涙が溢れていた。
「子供たちがふたりとも大きくなってしまったわ、マック」
「そうだね」と僕は彼女にキスをした。「いずれはそうなるものだよ」
ブリイは突然、両手で僕の顔を挟み、僕の目をじっと見つめた。
「マック、もうひとり子供を作りましょう。今度はあなたとあたしとで。赤ちゃんが欲しいの、マック」 いったんそこまで言い、また鼻をすすった。「こんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。あなたのことをすごく愛してるし、もうすでにあの子たちがいなくてすごく寂しくなっているの。子育てをもう一度したいの。すごく驚きに満ちていたことだったもの! ふたりともここから200キロしか離れていないところにいるのは分かるけど、とても寂しいのよ」
「僕もだよ。もし、赤ちゃんを作るとするなら、ちょっと練習すべきじゃないかな?」
ブリイはハッと息をのんで僕を見つめた。「ほんと? あなたも望んでる? 赤ちゃんを作ることを?」
「もちろん。君と同じような赤毛の女の子を希望してるんだ。ブリアナ、僕も君を心から愛しているよ」
僕は彼女を抱き上げ、抱えながら誰もいなくなった家の中を寝室へと進み、そして「練習」を始めた。グランビルを追い出さなくてはいけなかったけど、犬と遊ぶより子作りの方が楽しい。ことを終え、ウトウトしていると、ナイトテーブルに飾ったマギーとストークリーの写真が目に入った。ふたりとも浮浪者には決して見えない。
おわり