「アンソニー・ブラウン:甘い香りのする男」 Anthony Brown, Sweet Smelling Stud by The Warthog
1年間のハードワークの後、ようやく僕のプロジェクトが終わった。今度はバケーションだ。幸い、学校も年度末を迎えていて、妻のブレンダはこの2日ほどで教師の仕事を仕上げ、それから解放される。彼女は、ひと月ほど前に、少し休暇をもらう準備ができてると僕に伝えてくれていた。
僕は、近くの大都会にあるホテルに2泊する予約を取った。日中は観光名所を見て歩き、夜は都会のナイト・ライフを覗いてみようと考えていた。ブレンダに計画を話したら、彼女もワクワクしているようだった。
3日後、僕たちは車に飛び乗り、出発した。初日は、計画通り、都会を見て回って昼夜を過ごした。だが、その日の行動ですっかり疲れてしまい、夜はすぐにベッドに潜り込んでしまった。2人とも、眠ってしまう前に、愛し合うのに必要なエネルギーを取っておかなかったことに、僕はちょっとがっかりしたが、次の日の夜は、こうはならないと誓っていた。僕は、美しい妻を驚かす計画を用意していたからである。
翌日は、朝遅くまで寝ていた。起床後、着替えをし、ブランチを食べ、再び都会の観光を始めた。日没になる頃、素敵なレストランでディナーを食べた。食事をしながら、僕はブレンダに、ホテルに戻ったらちょっとしたビックリ・プレゼントがあるんだと話した。彼女は、どんなプレゼントかしきりに知りたがっていたが、僕は食事が終わるまで待つように言った。それを話したとたん、どっちが先に食べ終わるか競争になった。勝ったのはブレンダの方。会計が済むのを待っている間、彼女はウェイターが仕事がのろいと不平を言い始めた。実際、あのウェイターはそんなにのろかったわけではないのだが、ブレンダにはそう映ったのだろう。妻が、僕のビックリプレゼントにとてもワクワクしているのは確かだった。
支払いを済ませ、2人、急いでホテルの部屋に戻った。妻のためにドアを開けてあげるのは夫の役目だろうけど、僕は、それすらできなかった。ブレンダが我先にと急ぎ、自分の持っていた鍵でドアを開けたからである。彼女がドアを開けたとき、ようやく僕も彼女に追いついた。妻は部屋に突進し、ビックリプレゼントを探し始めた。
「分かったわ、負けたわ、トム。どこにあるの?」
僕はクローゼットの中に手を入れた。彼女はそこはチェックし忘れたようだ。そして、クローゼットの中から衣類が入った箱を取り出した。
「さあ、どうぞ」
ブレンダの顔が急に崩れて、あの愛らしい笑顔になった。3年前、僕が始めて彼女を見かけたとき、彼女に一目ぼれしてしまった、あの笑顔である。
ブレンダは箱を手にして言った。
「トム、あなたってとても優しい人」
箱ごと、ベッドの上に飛び乗って、包装紙を剥いていく。素早く袋を開けて、中から、僕が買ってあげた衣装を取り出した。ブレンダの笑みが消えていき、替わりに心配そうな表情が浮かんだ。
「トム? これ、とっても素敵なんだけど、私には着られないと思う」
「どうして?」
彼女は衣装を両手で掲げて、全体を見渡した。
「だって、これ、すごく露出してるし」
「分かってるさ」 僕はちょっと好色そうな笑みを浮かべて言った。「君が着たら、すごくいいと思ったんだ」
「どうかしら」