Sissy Secretary 8 「シシー秘書8」
「うわ、びっくり……君、ずいぶん可愛くなったね」とジェイムズが言った。彼は下級役員のひとりで、個人付きの秘書はいないので、管理の仕事には秘書たちのグループから誰かを出してもらって仕事をしていた。彼は背が高く、ちじれ毛の金髪をしている。正直な意見を言えば、彼はかなりハンサムな男性だとナオミは思った。典型的な嫌な男、だけどハンサム。「君、今週末は何か予定がある?」
ナオミはデスクを押して、回転いすを滑らせ、短すぎるスカートの中、長くほっそりした脚を見せた。ジェイムズは、まるで合図を受けたとでも思ったのか、まっすぐに視線をその脚に向けた。彼のその反応に、ナオミはどういうわけか分からなかったけれど、ハッとしたし嬉しくも思った。別に、男性が自分に魅力を感じてほしいと思っているからではない。むしろ、ナオミが、これまでのライフとしての人生の大半、ほとんど透明人間になっていたという事実と関係があった。あざけりの的になるとき以外は、まったく目立たない存在だったのである。ナオミはずっとポジティブな目で注目されることに飢えていた。それゆえ、ジェイムズが好意的な目で彼の脚を見た時、ナオミはもっと彼によく見せてあげたいと思ったのだった。
もちろんジェイムズはナオミが本物の女性でないことは知っていたが、それを気にしない人間でもあった。多分、ジェイムズは、社内の他の男たち同様、トランスジェンダーの女性とか女装者とか女性っぽい若い男を好ましいと思っているのだろう。結局、この会社では、すべての秘書がそのカテゴリーに入っていることには理由があるに違いない。
「お付き合いとか親ぼくとかはダメっていうルールはないの?」と、ナオミは媚びるような笑みを浮かべながら訊いた。
「いや、実際は、その正反対だよ」とジェイムズは、キュービクルを仕切る倒れやすい壁板に何気なく寄りかかった。「むしろ、君たち秘書の方にこそ、守らなくちゃいけないルールがあるような。つまり……」
「どうしてあなたたちって新入りの女の子にちょっかい出すのかなあ?」とビアンカの声が聞こえた。ジェイムズは振り向いて何か言おうとしたけれど、ビアンカは遮った。「あなたは、そのたぐいの扱いを受ける資格はないの。分かってるでしょ? でも、昇進した時には……」
ビアンカは、昇進するとどうなるかは言わなかったが、ジェイムズはひるまなかった。「多分、彼女に決めさせるといいんじゃないかな? 彼女は大人の女性だ。自分で自分の行動を選択できるんじゃない?」
「もちろん」とビアンカは答えた。「でも、彼女が言うこと、あなたの気に入る返事じゃないと思うけど」
ふたりともナオミに顔を向けた。ナオミは肩をすくめたいと思ったけれど、なんとかそれをとどまった。こういうふうに表に出されて焦点をあてられるのは好きではなかった。心の中、一方では、ジェイムズの誘いに乗ってしまいたい部分もあった。下級クラスとは言えジェイムズは役職についているのだから。しかも、彼は最近メキメキ頭角を現している若手だし、秘書として、彼を楽しい気分にさせておくのは仕事の一部ともいえる。でも、他方、ジェイムズは明らかに性的な望みも持っている。結局、ジェイムズは、単に友達として遊びに行くことだけでは納得しないだろう。だがナオミ自身は、その手のことはお断りなのだ。
「雨天順延というか、この次にならお誘いを受けられるかもしれないと思うけど……」とナオミは穏やかに、そして嬉しそうに答えた。この返事だと、将来デートに応じてくれる見込みがあった。これは、ジェイムズには無視できない可能性である。ナオミは彼を引っかけたままにしているわけで、本能的に返事したのだろうけど、ナオミ自身、自分の返事の効果に驚いていた。そういうことは意図していなかったから。「……でも、いつかあたしに声をかけてね。いつでも誘ってくれていいから」
ジェイムズはニヤリと笑った。「今の君の言葉、やりがいのある課題と考えることにするよ」
「そうしてくれなかったら、がっかりしたかも」とナオミは答えた。ジェイムズは、その後、もうちょっとだけ浮ついた言葉を交わした後、ナオミとビアンカを後にして、仕事に戻っていった。
「上手だわ。本当に上手だったわよ」とビアンカが言った。
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