2ntブログ



僕のフタナリ妻とウェイトレス (3) 


「あっ」と、戻っていくウェイトレスの背中に妻が声をかけた。「ごめんなさい。もうひとつあるの。このお店、どこかにお手洗いはある?」

ウェイトレスは髪をなびかせ振り返った。「もちろんです。奥のドアから出て右側に」とカフェの奥にある網戸ドアの向こうを指さした。

「お願いだから、案内してくれる?」 コリーンは立ち上がりながら、甘い声で頼んだ。「あたし、すごい方向音痴なの」

実際は違う。もっとも、ウェイトレスは案内できて嬉しそうで、ふたり一緒に歩いて行った。コリーンは僕に見える方の頬だけをちょっと歪ませ、笑みを見せた。彼女、さらに獲物に魅力を振りまこうとしてるのか?

しばらく通りを歩く観光客やサーファーや引退してくつろぐ老人たちを眺めてすごしていたが、ふと、コリーンがトイレに行ってからかなりの時間が過ぎていることに気づいた。加えて、僕の注文したコーヒーはまだ来てない。どうなっているのか聞こうにも、例のウェイトレスの姿も見えなかった。

僕の心配に反応するかのように、突然、スマホが鳴った。コリーンからのメッセージが入っていた。「女子トイレに来て。ちょっとヘルプしてほしいの」とある。

ひょっとして生理の問題かな? 僕は妻のバッグを取り、トイレに向かった。たいていの問題には、女性のバッグの中に役立つものが入っているに違いないから。カフェの中を足早に進み、奥のドアから外に出た(そこには、良い雰囲気のちょっとした野外のスペースがあって、テーブルも植木もあるし、日よけもある。ここに座って食べたほうがよさそうだな)。そのスペースの脇の方、ツタの天蓋の下に女子トイレがあった。僕は優しくノックした。

中からは、くぐもった笑い声が聞こえてくる。違うドアをノックしたのかな?

「あなたなの?」とドアの向こうから声がした。コリーンの声だった。

「ああ。大丈夫か?」

「うーん、ちょっと中に入ってきてくれる?」 

また、ひそひそ声での笑い声が聞こえ、その後、ちょっとして鍵が開けられる音がした。僕はためらいがちにドアを押し、そのとたん、どうして僕のコーヒーが来なかったのか理解した。あのウェイトレスは、僕の妻へのサービスで忙しかったのだ!


[2021/05/21] 僕のフタナリ妻とウェイトレス | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する