The First Day of your New Life 「新しい人生の最初の日」
「本当に準備はいいの? もう二日くらい先に延ばしても恥ずかしいことじゃないのよ?」
「もちろん、準備なんかできてないよ。どうしたってムリ。でも、たった二日で今の状態が変わるわけない。だから、先延ばしする理由がないんだ。むしろ早く片付けてしまった方がいいよ」
「あなた、今度のことを全部、間違って見てるわよ」
「そう? どんなふうに?」
「ジェス、今日は、あなたの新しい人生の最初の日なの。これからは、あなたに会う人は誰でも、あなたのことを美しい女性として見ることになるの。あなたはワクワクして喜ぶべきだわ。ナーバスになるのは確か。不安になるのも確実。でも、『片付けてしまう』ような状況ではないのよ」
「もし、僕が本当にトランスジェンダーだったら、そういうのももっともだし、良いことなんだろうけど、でも、君も僕も、僕がトランスジェンダーじゃないのは分かってるだろ?」
「あなたのカルテにはそうは書いてないわ」
「だって、君が僕の体を……」
「それは済んだことよ、ジェス。そして、変えることができないことでもあるの。だから、それを受け入れて、前を見て、新しい人生に漕ぎ出すべきだわ。そうじゃなきゃ、取り戻せない昔の生活にいつまでもしがみついて、気がくるってしまうことになるわよ」
「君のせいでね」
「議論しようとすればできるわよ。あたしがこういうことをしたのはあなたの行動の結果だって。なんだかんだ言っても、あなたが浮気したんだから」
「してないって! 千回は言ったはずだよ。あの女性とは何もなかったって! 彼女はただ……」
「はい、はい……全部、壮大な陰謀のせいなのよね。でも、だからといって、今の時点で何か変わるの? あなたは自分の過ちを認めたわけでしょ? それに、あたしが見るところ、あなたもあの道をもう一度たどりたいとは思っていないようだし。そうじゃない?」
「あ、ああ、そうだけど……」
「じゃあ、話し合う意味がないじゃない。さあ、早く服を着て。さもないと、職場に復帰する初日から遅刻することになってしまうわよ」