Fine 「そこそこ」
「ほらぁ、顔についたスペルマをぬぐって、笑って!」 元妻のジーナが叫んだ。今は私のマネジャーをしている。「これは大事な仕事なのよ、レイシー。すごく大事なの」
その言葉に反論するなんてできなかった。なんだかんだ言っても、以前の私は、ポルノでセックスシーンを演ずるなんて、たった1回でも考えてもいなかったのだから。ましてや100回近く演ずることになるなんて。だけど、この3か月ずっと忙しかったし、さらに今後もたくさん予定されている。
この日の相手役はディック・ピストン。彼からティシュをもらって、顔についた彼のザーメンをぬぐった。熱いシャワーを長々と浴びるまでは、本当にきれいになったとは感じないけど、今となっては、乾き始めた精液のべとべとした感触にもずいぶん慣れていた。実際、ポルノの仕事を始める前からすでに、この感触には慣れていた。
言われた通りに笑顔を見せた。そしてディックがそばに寄ってきたのを受け、ジーナはスマホで写真を撮った。「あなたのこと、とても自慢に思うわよ。この次の契約はすごいことになるはず」
「そうなるといいわね」 と私は答えた。
普通の生活を送る希望は、もうずっと前にあきらめていた。今の私はポルノスター。それを変えたいと思っても、変わらないだろう。自分でベッドを用意した以上、そのベッドで寝るのは当然。それでも、しょっちゅう頭に浮かんでくる。かつての私が、将来どんなことが待ち受けているかを知ったなら、何と言うだろうかと。
最初の反応は驚きだったはず。何と言っても、当時の私はパンティを履いたこともなく、ましてや女性になるなんて考えたこともなかったのだから。大きな間違いを2,3回。悪い決断を2回ほど。加えて、私を女性化の道へと進ませ続けた妻の存在。それらが相まって、すべてが変わってしまった。私は変わってしまった。ちょっと「小さい」と思われる側ではあれ、普通と言えた会計士から、豊かな乳房を誇る美しい女性に変身してしまったのだ。
そして、ジーナも、私の新たな女性性を元手にちょっと金儲けをする計画を立てた。最初は、ソロで行うウェブカムのショー。でも、彼女がそれに「ゲストスター」という要素を加えた後は、急速にポルノ業界の仕事に変貌してしまった。そして、今や、100以上もセックスシーンを経験し、私は事実上、誰もが知る存在になっている。少なくとも、トランスジェンダーのポルノ女優というジャンルに限ればの話だけれども。
でも、それに対して私はどんなふうに感じていたのだろう?
正直、自分でもわからない。楽しんでなかったと言ったらウソになるだろう。強く逞しい男性に腰をつかまれ、やりたい放題に犯される。それには、何か魅力的な感じがある。それを思っただけでゾクゾクしてくる。でも、もしやり直す機会があったら、まったく同じ道を選んだだろうと言ったら、それもウソになると思う。私は、最初からずっと女性でいたわけだけど、それは、自分から熱心にそれを求めたというより、不承不承、受け入れてきたことと言ったほうが正しい。
だからと言って、今の自分の気持ちが変わるわけではない。もう後戻りはできないし、正直に言えば、今の自分で、そこそこいいなと思っている。熱心にというわけじゃないけど、いつの日か、本当の幸せが訪れるといいなと期待している。でもそれまでは、そこそこいい生活だなと思うことが、自分にできる最善なことなのじゃないかと思っている。
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