蒼白の顔でジミーは立ち上がった。スティーブに比べて非常に背が低いというわけではない。それに週に4日はジムに通ってトレーニングをしている。彼は、仕事で鍛えられた筋肉とバーベルで鍛えられた筋肉に違いはないと思えた。違いがあるかどうか、今から確かめようではないか。
「わしも君の意見にこの上なく同意じゃよ、若いの!」 大きな声が轟いた。
スティーブは振り返った。彼の後ろには、高価なスーツに身を包んだ背の低い禿げがかった男が立っていた。すでに老年期になってはいるものの、痩せた体をしっかりと直立させて立っている。
「わしが生まれた時も父と母は小さなトレーラーに住んでおった。わしの楽しい想い出のいくつかは、あそこに住んでいた頃のものだよ」
見知らぬ男は力を込めて語っていた。彼は若いジミーをじっと見据えて語っていた。彼はジミーのことが気に入っていないらしい。ジミーは、突然に何か嫌なものを目の前に出されたような顔をしていた。がっくりと腰を降ろさざるを得なかった。
「ジョーナス・レイノルズ」 老人は自己紹介を兼ねて、そう名乗った。
彼はスティーブに手を差し伸べた。握手する二人。力が入った握手だったが、その握手は敵対心がこもった力ではい。スティーブは、この老人の手助けに感謝していた。いわば挑戦状のように力を込めた握手をしてくる男たちが多過ぎる。スティーブはそういう挑戦にはたいてい勝ってきたものの、そんな握手を受けるのが楽しいと思ったことは一度もなかった。
「スティーブ・カーチスです」 彼は名を名乗った。レイノルズ氏は頷いた。
「そして、こちらは君の奥さんかな・・・可愛いバーバラさん?」
そう言ってレイノルズ氏はバーバラに手を差し伸べた。バーバラは椅子から立とうとしたが、途中でやめてしまった。椅子を後ろに引くだけのスペースがなかったのである。そのまま立つとジョーナスにぶつかってしまうかも知れないのだった。どうしていいか分からない彼女の顔に恥ずかしさによる赤みが首の辺りまで広がった。